色で選ぶ万年筆インク!
INK 万年筆インクを楽しむ本
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2019.02.22
大人たるもの、いつかは万年筆を手に入れたい……そう憧れている人も多いのでは? とはいえ、星の数ほどある種類の中から自分ぴったりの1本に巡り合うのは、なかなかどうして難しいもの。「これしかない!」と思えるような万年筆を選び出すためには、それなりの手順が必要だ。初心者でも失敗しない、万年筆選びの4つのステップをご紹介しよう。
手ごろな値段のものから超がつくほどの高級品まで、万年筆の価格帯は実に幅広い。まずは予算によってどのようなモデルを購入できるのかを知ることから始めよう。いくらぐらいが妥当という基準はないものの、ペン先の素材は大きな選択ポイントだ。「金ペン先」は比較的高価だが、きちんとメンテナンスすればほぼ一生もので、使うほどに書き味もよくなっていく。一方、鉄ペンとも呼ばれる「スチールペン先」は比較的安価で、しなりはなくとも独特の滑りがあり、強めの筆圧でも受け止めてくれるが、寿命による劣化は避けられない。
最初はお試しで安いものを、というのであれば、本体5000円以下のスチールペン先モデルがおすすめ。もう少し万年筆の柔らかな書き味や快適な筆記バランスを味わいたいなら、1〜2万円で手に入る国産の金ペン先モデルを。どうせならよいものを大切に使いたい、という場合は、軸やトリムに上質な素材を使った5万円以上の金ペン先モデルを選ぶのも◎だ。
【プラチナ万年筆 プロシオン】
5000円万年筆も新時代へ。2018年7月発売のプロシオンはステンレスペン先だが金ペン級の書き味。スリップシール機構、新設計ペン芯も搭載。
価格:5400円(税込)
【パイロット カスタム742】
国産入門モデルとして不動の人気の王道デザイン。ペン先が15種類から選べる。
価格:2万1600円(税込)
【中屋万年筆 シガー十角赤溜(TW)】
国産の一生もの万年筆といえば中屋万年筆。漆塗りの透明感のある飴色の艶が美しい。
価格:9万1800円(税込)
最初の1本を選ぶ際、店頭ですすめられることの多いのは細字のペン先に中軸のボディ。細字は筆圧が強くてもねじり気味に書いてもインクが途切れにくく、中軸は万人向けの筆記バランスをしているためだ。定番品で扱いに慣れたら、2本目からは使いたい用途を考え、それに合ったペン先や軸を選んでみよう。
手帳などに細かい書き込みをするのに最適なのは、インクフローを絞った細字や極細字のペン先。メモにはポケットサイズの万年筆も便利だ。ノートや原稿用紙などの広い面積に長文を書くなら、使いやすくインクの色も楽しめる中軸・中字がぴったり。大きな文字でゆったり書きたい手紙にはヌラヌラとした書き味の太字を選び、軸は太めのものを寝かせ気味に持つといい。サインや宛名書き、メッセージなど文字にインパクトを求めるものには、縦太・横細の独特な線が引けるカリグラフィーペン先もおすすめだ。
万年筆はモデルによって最適な筆圧が異なり、相性がよくないとペン先が曲がったり、ペン芯とペン先が離れてインクが出なくなったりすることも。自分の書き方と好みを把握し、しっくりくるものを選びたい。
一般に握る位置がペン先寄り、筆記角度が立て気味であるほど筆圧は高い傾向にあり、合うペン先は限られるが、弱ければよいというものでもない。例えば、【1】小さく細い軸は立て気味・高筆圧に、【2】太く重い軸は寝かせ気味・低筆圧に書くことで本来のパフォーマンスが発揮される。万年筆に慣れるにつれ、無理に矯正しなくても筆記バランスに合った書き方ができるようになり、マッチするペン先も増えていくはずだ。
筆記バランスや書き心地のチェックに試し書きは欠かせない。店頭で試筆する際のポイントを押さえておこう。まず、きちんと試し書きができて、相談に乗ってくれる店員がいる店を選ぶことが大前提。試筆用紙は万年筆との相性がよい上質紙が多いので、愛用のノートや一般的なコピー紙などを持参し、試させてもらうことをおすすめしたい。その際にはひと言お店にことわることも忘れずに。
また、試筆はほとんどの場合、軸内にインクを入れるのではなく、ペン先をインクに浸けただけの付けペン状態で行うため、インクフローの判断が難しい。店員がペン芯の余分なインクを拭ってから渡してくれても、不十分だと感じた際はひと言ことわりを入れてインクをさらに吸い取ってから書き、ペンポイントまでインクが届くかを確認させてもらおう。まずは名前や住所など、書きなれた文字をいろいろなサイズで書いてみるのが基本。人前での試筆は緊張するものだが、いつも通りの書き方で試せるようリラックスして臨みたい。
パソコンやスマートフォンが普及した今だからこそ、手書きの文字に心惹かれるもの。それが万年筆で書いたものなら、なおさら味わい深く感じられる。確かに手入れの手間はかかるが、それも万年筆ならではの特別な時間。万年筆の似合う大人がステキに見えるのには、そんな心のゆとりも関係しているのかもしれない。
(出典:『万年筆とインク入門』)
(エイサイト編集部・ヨシダ)
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