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2016.09.06
リオオリンピックが終わり、いよいよ4年後の東京オリンピックへの期待が膨らんできた。ぜひ観戦やボランティアなど、何かしらの形で自分も参加したい!と思っている人は少なくないだろう。
さてそのオリンピックだが、いざ開催となるとどうしても気になるのが「経済効果」。期待する声とともに、そこに投下される金額についてもよく論議されるところだが、いったい、どれほどの利益が得られるのか?
日銀は昨年、五輪開催に向けた建設投資や外国人観光客の増加などが、GDP(国内総生産)を最高約1%(5~6兆円)押し上げる効果があると発表。経済効果は最大30兆円に達するという予測を示した。
しかし、経済学者の老川慶喜先生によると「五輪特需」の恩恵を受けるのは建設業や観光業といった一部の業界であり、日本人がみんな豊かになると盲信するのは要注意だという。
「経済はバランスが大事。あまり一気に潤うと、需要と供給のバランスが崩れて混乱をきたします。たとえば’94年のリレハンメルでは、大会終了後、ホテルの40%が倒産しました。そうならないよう先を見据えることが大切です」
たとえば、2020年オリンピック開催年の訪日外国人観光客数は1年あたり約3300万人、同オリンピックへの設備投資額は約3831億円とも言われている。1年あたり約3300万人というのは、東京ドーム2つ分(約10万人)の人が毎日日本を訪れるという言い換えもできる。
ただ、五輪に向けて上がってくると言われているGDP(国内総生産)も、建設投資の増加や観光客増加など、こうした一部の業界による結果だ。国民全体が潤うわけではなく、恩恵を受けた業界も大会が終われば、構造不況に陥る可能性があるのである。
一方で、オリンピックに向け、革新的な動きが生まれると日本経済は活性化するだろう、と老川先生は予測する。そして、その経済効果は未知数である。
「’64年の新幹線や民間警備会社誕生のように、五輪を機に新しい産業が生まれることもある。そんな経済効果に期待したいですね」
また、こんな見込みも出されている。オリンピックへの立候補年である2011年から開催年の2020年までの約10年間で、実質輸出額が約65.5兆円から約78.6兆円へ。なんと約20%増加すると予測されているというのだ。
「五輪開催は先進国としての証。その上で、国際的な組織への加盟が重なることによって信頼感が生まれ、経済が成長するとともに貿易額も増加すると考えられる。直接的な因果関係があるとは言い切れませんが、貿易に影響する説はおもしろいですね」。
1964年のオリンピックでは高度経済成長のきっかけとなった東京オリンピック。だからこそ、オリンピックにかける私たち日本人の期待は大きい。だが、それは日本経済が発展途上だったころの話。先進国の立場となったいまは、状況が大きく異なる。
老川先生は、経済は俯瞰して見ることが大切、と念を押す。
「経済は、数字だけでは見えないことがいっぱいあるんです。2020年東京大会では、建設業が潤い、職人の賃金や材料費は上がるかもしれない。しかしそれによって、東北や九州の復興が遅れるかもしれません。経済は俯瞰して見ることが大切です」
ぜひ4年後を見据え、端的に過去と比較するのではなく、部分的な経済成長やその逆に踊らされることなく、冷静に、その一部始終を見守っていきたい。
○老川慶喜さん
1950年生まれ。立教大学経済学部卒業後、経済学者、歴史学者に。現在、跡見学園女子大学副学長、立教大学名誉教授。『東京オリンピックの社会経済史』(日本経済評論社)、『日本鉄道史 幕末・明治篇 蒸気車模型から鉄道国有化まで』(中央公論新社)など著書多数。
○データ出典
日本銀行調査統計局「2020年東京オリンピックの経済効果」
TOKYO2020 立候補ファイル
IMF「World Economic Outlook Databases」2016年4月版
日本銀行調査統計局「2020年東京オリンピックの経済効果」
財務省「貿易統計」
(ヨシザワ)
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