水戸の本気を目撃せよ。
水戸本
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2017.07.06
京都には神社仏閣、季節ごとの絶景など多々あれど、やっぱり楽しみなのは現地での食事。少し背筋を伸ばして行く料亭もいいですが、あえて着飾らず、地元の居酒屋にふらりと足を運ぶのもおすすめです。地元民に愛される、等身大で楽しめる京都三大居酒屋を紹介します。
昭和9年創業。入り口にコの字カウンター、奥には大きな1枚板のテーブル席が鎮座しています。西陣の旦那衆が通いつめた創業当時は1日に100升もの酒が出ましたと2代目の酒谷芳男さんは話します。彼らが飲んでいたのは、いまも受け継がれている神馬の看板ブレンド酒。灘の酒を6種類、「それこそ長年の勘ですよ」と話す芳雄さんが独自でつくっているのです。
現在は、15年前に修業先から戻った3代目の直孝さんと二人三脚。定番の居酒屋メニューから割烹を思わせる逸品で常連客をもてなしています。「ずっと続けていると次は? と期待してもらえる。だから素材へのこだわりは強くなりましたね」と直孝さんは笑う。いまも遠方からやってくる人もいるといいます。しかし「ウチは大衆居酒屋。気軽さがないとダメですよ」と、どの客とも距離感を大切にした酒場のあるべき姿を保ち続けています。
【DATA】
●神馬
住所:京都市上京区千本通中立売上ル西側玉屋町38
営業時間:17:00~21:30
定休日:日曜
電話:075-461-3635
ズラリと壁に貼られた短冊の数々。創業時には串かつとどて焼きしかなかったとは信じられないほど。創業は昭和43年。「万長酒場」という屋号で、当時人気だった「万長」の樽酒を出す立ち飲み店としてオープンしました。現在調理場に立つ谷口達男さんも当初から働きはじめ、徐々にメニューを増やしてきたというが、実は谷口さんの料理は独学。食べ歩きや雑誌などから技を盗み、腕を磨きながら100を超えるメニューを生み出してきたのです。
「お客さんのわがままに対応してると数が増えてね」と語る谷口さんの横で、現在店を回す娘の上田さんは「でも美味しいと言ってもらえたものしか残ってないわよ」と笑う。実はこの短冊、営業中も密かに貼り替えているというから驚き。そうして増えてきたメニューとともにいつしか「万長」の酒がなくなり屋号は「たつみ」に。街頭もなく薄暗い通りだった店前が、明るいメインストリートへと様変わりしてきたが「オジサマたちの喫茶店」というお店のスタンスは変えなかったと話します。迎え入れるその不変の温かさに惹かれ、取材中も女性のお一人様がフラリ。いまやみんなの喫茶店と呼ぶにふさわしい。
【DATA】
●たつみ
住所:京都市中京区裏寺町通四条上ル中之町572
営業時間:立ち飲み…12:00~22:00、座席・テーブル…12:00~21:00
定休日:木曜
電話:075-256-4821
修学旅行生から、いまでは外国人観光客まで。多くの人が通り抜ける新京極商店街の一角に、レトロな看板で出迎えてくれる「京極スタンド」。大理石の長テーブルは相席も当然で、この日も常連のご年配と観光中の女性二人が仲よく杯をあげて談笑。その傍らで夕食を済ませる学生の姿が見られるのも日常風景で、まさに食堂ともいうべき姿です。最近の居酒屋とは一線を画す、隣との距離感の近さ。これが逆に居心地よくなってしまう不思議な魅力は、ついつい客と一緒に楽しんでしまう店主の杉山貞行さんと給仕さんの、つかず離れずの接客スタイルが生み出しているのでしょう。
「一人で来ても、なんか寂しくないから」と常連さんも語る通り、気軽で雑多な雰囲気にあふれています。野球中継を観ながら1杯のつもりが、隣と話して気づけば3杯目なんてザラと杉山さんも話します。冷奴からハムカツに春巻き、何でも揃うメニュー同様の懐の広さに、気づけば皆癒やされているのかもしれません。そうした雰囲気の中「ココで働いてると楽しいから」とベテラン給仕さんがポツリ。このひと言が、何よりもこの店を表しています。
【DATA】
●京極スタンド
住所:京都市中京区新京極通四条上ル中之町546
営業時間:12:00~21:00
定休日:火曜
電話:075-221-4156
(出典:『Discover Japan』、text:Takeshi Tsuchihashi、photo:Shinryo Saeki)
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