新たな時代の作り方。
Discover Japan 2019年4月号 Vol.90
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2018.01.01
江戸時代の参勤交代を機に、日本各地を人々が行き交う中で、お雑煮は地域それぞれに合わせて変化していきました。お餅ひとつとっても、丸餅、角餅の他に餡餅があり、煮る、ゆでる、焼くと扱いもそれぞれ。出汁は昆布と鰹節のほかに、煮干し、焼干し鮎など地域性があり、そこに各地で縁起をかつぐ具材が加わり、地域色豊かに発展していきました。一般社団法人 日本食文化会議の松本栄文さん監修のもと、個性豊かな各地のお雑煮をご紹介します!
京都の雑煮といえば、白味噌仕立ての汁に里芋などが入るイメージが強いけれど、もともとは宮中で用いられた鮑が、徳川8代将軍吉宗の倹約令により頭芋(親芋)に転じた歴史があります。一家の主、あるいは長子に限り頭芋を丸ごとよそうのは、子孫繁栄の願いを込めてのことだそう。その風習はいまでも京都に残っており、ごろりと大きな芋を食べきるまで、何度でも温めて直して食べるといいます。
<材料>
1.丸餅/煮
2.昆布出汁/白味噌仕立て
3.頭芋、大根、削り節
全国でも珍しいお餅なしの個性派雑煮。かつてお餅文化がない山深い村で、土地の人々が安徳天皇を雑煮でもてなした際、餅の代わりに使ったのが豆腐だとされています。沖縄の島豆腐のようにしっかりとした豆腐が2枚、お椀の上に十字に重ねられ鎮座する佇まいは圧巻!
<材料>
1.いりこ出汁/田舎味噌仕立て
2.岩豆腐、頭芋、人参
島根の山間部では、雑煮に限らず秋の「落ち鮎」を焼干しにして出汁を取る習慣があります。山間部ゆえに川の恵みを出汁に生かせるわけですが、鮎特有の風味がある淡白な汁をさらさらといただく中で、甘く炊いた黒豆に当たると、なんともいえない口福を感じます。軟らかく煮た丸餅、削り節との相性もバッチリです。
<材料>
1.丸餅/煮
2.焼干し鮎出汁/薄口醤油仕立て
3.蜜煮黒豆、削り節
江戸雑煮といえば「菜鶏雑煮」。武家にとって「名をとる」「名を上げる」に通じる菜っ葉(小松菜)と鶏は雑煮に欠かせない食材でした。肉厚で軟らかい生っ粋の江戸前海苔は、いまは生産量が激減してしまいましたが、雑煮に海苔を1枚のせる風習は現代にも受け継がれています。
<材料>
1.切り餅/焼
2.鰹節出汁/醤油仕立て
3.鶏肉、蒲鉾、小松菜、柚子、浅草海苔
海の幸に恵まれた富山では、魚介を用いたさまざまな雑煮が見られます。富山県東部の黒部地域では福来魚(ふくらぎ)雑煮が一般的。福来魚はいなだの別名で、成長に合わせて名を変える出世魚です。塩焼きにし、短冊に切った野菜と葱、薄切りの豆腐を合わせ、煮た切り餅で食します。めでたい象徴のいくらをのせて豪華にどうぞ!
<材料>
1.切り餅/煮
2.昆布出汁/醤油仕立て・甘
3.いなだ、人参、ごぼう、白葱、こんにゃく、焼豆腐、醤油いくら、柚子
山形でも日本海側の酒田市になると、昆布出汁を用いた雑煮が一般的になります。旧八幡町界隈では、軟らかく煮た丸餅に、山形の特産品であるこんにゃくと干しぜんまいを加えた素朴な雑煮が伝わっています。東日本で丸餅を使うのは珍しいパターン。
<材料>
1.丸餅/煮
2.昆布出汁/醤油仕立て
3.糸こんにゃく、干しぜんまい
いかがでしょうか? 皆さんが一般的だと思っているお雑煮も、日本全国見渡せば、実はこんなに違いがあるのです。この他にも、黄粉につけて食べるものや、鮎をドーンと一匹のせるものなど、調べてみるととてもユニーク。皆さんの家のお雑煮は、どんなものですか?
(出典:『Discover Japan 2018年1月号 Vol.75[付録あり]』)
(編集:ナカムラ)
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