さばき技から調理術まで
寿司屋が教える魚のさばき方
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2017.12.19
壊れてしまったうつわでも、すてきによみがえらせてくれる「金継ぎ」。割れやひびを漆で接着し、さらに漆を塗り重ね、下地を整えた上で金属粉をまく。破片の接着、金属粉の定着――どちらも天然素材・漆のなせる技だ。今回は編集部を代表して、編集長・高橋のうつわを使って金継の手順を紹介しよう。
麦漆(小麦粉を練ったものに生漆を混ぜたもの)を破片に塗り、接着し、乾燥(約10日)。
砥の粉と生漆を混ぜた錆漆で段差・隙間を埋め乾燥(1日以上)。周りは汚さぬようマスキング。
漆を下塗りして乾燥(1日以上)、中塗りして乾燥(同)と、2回ほど塗り重ねて下地を整える。
絵漆を塗り、それが乾く前に金粉を毛棒に付けてなでるように蒔く。その後2日ほど乾燥。
テレピン油や樟脳油で希釈した生漆を薄く塗り、乾燥させ(1日以上)、金粉を定着させる。
鯛の歯「鯛牙」やメノウ棒で、粉の表面をこすり、美しいつやが出るまで磨く。
作家の工房を訪れた友人から贈られ、「薄手で、料理がよく映える」と愛用していた大切な皿。破片の足りない部分や端の欠けた部分はあえて金で埋めアクセントとした。粒子が細かい丸粉1号の金粉で蒔き、細いラインの瀟洒な雰囲気に変身。
「金継工房 リウム」に持ち込んだのは、富山の陶芸家・釋永岳さんの作品。豪快に割れてしまった破片を前に不安に駆られるが、職人さんから「直せますよ」と言われ、安堵。
まず接着の方法や素材のラインアップを教わり、相談する。工房には多彩なサンプルが揃い、金属粉なら金・銀・真鍮・アルミなどさまざまな種類が。ラインの盛り上がり方や太さも選べる。接着法は大きくふたつ。「本金継ぎ」と呼ばれる天然の漆で接着する方法と、「簡易金継ぎ」と呼ばれる樹脂系接着材を使う方法だ。漆は、湿度約70~80%・温度約25℃の環境下で水分を含むことでゆっくり硬化し、乾くまで丸1日以上かかる。また漆を塗り重ねて下地を平坦に整えなければ、装飾の金属粉はうまく定着しない。そのため本金継ぎの場合、納期は1ヵ月半~2ヵ月程度となる。一方、簡易金継ぎなら乾燥が早いため納期は短縮。またガラス素材や大きめなオブジェには接着材が適する。ただ日常口にするものは、天然素材の漆がおすすめだという。
編集長・高橋のうつわは上の工程を経て、見事によみがえった。「いつか金継ぎをと取っておいたものがきれいに直って、とてもうれしい」と、大満足の様子である。
■金継ぎ工房 リウムの価格をオープンにする工夫■
割れ、欠け、ひびの部分を測り、金継ぎする面積や内容、使用材に応じて見積り。小さな欠け1カ所で3500円程度~、今回の本漆直し(金紛)で1万6800円。
【DATA】
●金継工房 リウム
住所:京都府京都市下京区烏丸通六条下ル北町190 ホテルカンラ京都 本館1F
時間:10:00~18:00
定休日:月曜
電話:075-344-3815(ホテルと共用)
http://kintsugi-rium.jp
(出典:『Discover Japan』、写真:Ko Miyaji、文:Mayumi Furuichi)
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