写真をフィルムで撮る
FILM CAMERA STYLE Vol.6
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2017.09.08
スマホやデジカメが便利になりすぎて、フィルムカメラを使う機会が少なくなってしまった。技術が進歩し、スマホでもキレイに撮れるのだが、時々フィルムからプリントした写真を見ると、デジタルでは出せない重厚感があって、やっぱりアナログはいいなと思う。だから気合を入れて撮る時は、あえてアナログ写真にこだわるというのもいいかもしれない。今回はそんなアナログ写真でも、原点ともいえる「湿板」という技法で作る写真に注目してみた。湿板写真は1851年に発明された技法で、ガラス板などにコロジオンという薬剤を塗り、さらに硝酸塩を化合させて感光材を作る。それをフォルダーに入れて撮影するというもので、乾燥させずに濡れた状態で撮るから「湿板」と呼ばれている。日本では幕末に輸入され、有名な坂本龍馬の写真なども、この方法で撮られている。こうした古典的な写真技法を研究し、現代的にアレンジしている「田村写真」で、実際に湿板写真を撮ってもらった。
1.ガラス板 2.コロジオン溶液(3、5、6、8、9を混ぜ合わせたもの) 3.コロジオン 4.硝酸第一鉄 5.よう化カリウム 6.臭化カドミウム 7.硝酸銀 8.ウォッカ 9.エチルエーテル 10.コーティング用ニス(11、12を混ぜたもの) 11.サンダラック樹脂 12.ラベンダーオイル 13.炭酸カルシウム
【1】研磨したガラス板にコロジオン溶液を垂らし、ガラス板を傾けて全体にまんべんなく伸ばす。
【2】ガラスを硝酸銀溶液に浸して数分待つと、表面に感光膜ができあがる。この作業は暗室で行う。
【3】専用のフォルダーにガラス板をセットして、フタをしっかり締める。
【4】今回使用するのは木製のビューカメラ。レンズと背面のガラスの位置を前後させてピントを合わせる。
【5】カメラのレンズを通すと左右、天地が反転した像として映る。
【6】フォルダーをカメラにセットして、露光面のカバーを外す。
【7】レンズやカメラにシャッターが付いていないため、レンズにかぶせているキャップを外して撮影する。撮影しているのは、田村写真代表、田村政実さん。
【8】再び暗室でフォルダーからガラス板を取り出し、硫酸第一鉄の溶液を感光面にかけると、徐々に像が浮かんでくる。
【9】ある程度像が出てきたら、ハイポ(チオ硫酸ソーダ)の溶液に入れて画像を定着させる。
【10】数秒すると、表面を覆っていた乳白色の膜が取れていく。
【11】赤血塩を使ったファーマー減力液で画像を調整する事で全体のバランスが良くなり黒も締まる。
【12】よく水洗したらアルコールランプで乾かす。
【13】完全に乾いたら露光面にニスを垂らし、全体をコーティングできるように傾けて伸ばす。このニスがラベンダーの匂いがするのは防虫効果があるからだ。
完成した湿板写真は、フィルムでいうとネガのような状態になっているため、裏側に黒の布などを敷き、その上にガラス板を載せると、一般的なモノクロ写真のような像になるので、そのまま額装するのがオススメだ。
湿板写真は基本的にはガラス板1枚分の写真だけしかできないが、ポジフィルムをスキャニングするための透過原稿用スキャナを使えばパソコンに画像を取り込んで、プリントアウトも可能。こんな雰囲気の写真が出来上がる。背景のボケ感が被写体を浮き立たせた雰囲気は、まさに歴史の教科書で見た坂本竜馬の写真のよう。時代観を合わせてクラシカルな格好をするのもよし、あえてモードなファッションで撮影してギャップを愉しむのもよし。一生の記念となること間違いなしのサービスである。
【DATA】
●田村写真
住所:東京都港区六本木5-11-32岩崎ビル2F
電話:03-3404-6646
営業時間:9:00~18:00
定休日:土・日曜
http://www.tamurasyasin.com
田村写真では一般的なフィルムの現像やプリントなどの他、ガラスに写真を焼き付ける「湿板写真」、「プラチナパラジウムプリント」、「サイアノタイププリント」など、古典的な技法を研究し、写真の製作をしている。また月に一回それぞれのワークショップも行なっているので、自分の手で古典技法で撮影、現像することもできる。
(出典:『Lightning web』)
Lightning Web
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