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名僧のありがたい言葉
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2018.03.01
10代~20代の若いメンズ客が押し寄せるサロンとして話題を呼び、業界内外から注目を浴びる『OCEAN TOKYO』。オープンから4年あまりで5店舗にまで規模を拡大したその成長の裏には、男性客をファンにし熱狂させる、若いスタッフたちの存在がある。
従来のサロン教育の常識に疑問を抱き、徹底して「人と人」として向き合うことをベースに人づくりをしてきたという『OCEAN TOKYO』。その“非”常識な教育論に迫るため、代表の中村トメ吉さんに話を聞いた。
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中村さんは、カリキュラムをつくらない理由をこう語る。
「既存の美容室が髪型を商品にしているのに対して、『OCEAN』は、スタッフの経験と生き様を売ってお客様の背中を押すサロンだから」
生き様を売るサロンであるならば、一人ひとり違った個性を持っていなくてはならない。その個性は、画一的なマニュアルやカリキュラムで育てることはできないというのだ。
「『OCEAN』のメンバーは、それぞれが自分の人生で実現したい志を持っていて、それをみんなに宣言しています。『自分がイケメンじゃなかったから、自信を持てない子に自信を与えたい』『学校の校則を変えたい。メンズがおしゃれな国にしたい』と、その志はそれぞれ。志が違えば進む道も変わります。当然、磨くべき武器も変わる。だから『OCEAN』にはカリキュラムがないのです」
会社や先輩から押し付けられたカリキュラムではなく、自分の口で吐いた志や自分で描いた道に必要なレッスンなら、誰もが頑張ることができると中村さんは言う。
「人は、自分がやりたいことであれば頑張れるし、輝ける。逆に言うと、アシスタントが仕事が嫌になってしまう理由は、上からあれもこれもと押し付けられるから。会社や先輩の都合ではなく、自分の夢を実現するためだったら、本気になれるものです。僕はその情熱を大事にしています」
『OCEAN TOKYO』では、シャンプーレッスンだけは最初にやるが、それ以外の技術は、どんな順番でレッスンしてもよい。
「スタッフには、『自分が一番心が動いたスタイルをつくれ』『チームに一番貢献できる技術から練習するのもアリ』と伝えています」
若手を動かす21の絶対法則とは?『若手を動かせ』(中村トメ吉著)
一人ひとり、異なる導き方をするオーシャンの教育を、中村さんは山登りに例える。
「自分の夢や志を口に出させることは、言い換えると『どの山を登るか』を自分で決めさせることです。それができたら、僕ら上の人間は、その山の頂上から見える景色を具体的に想像させてあげる。この山を登れば、こんな景色が見えるのか、と思えれば、山を登る意欲がわきます」
先輩はその山の頂上まで行くルートを一緒に考える。一歩を踏み出せないスタッフには、途中まで一緒に登ってあげる。山道の歩き方がわかり一人で歩けるようになったら、そこからは本人のやり方に任せる。
「山を登っている最中には、洞窟や吊り橋も出てくるはず。そこでビビって躊躇しているスタッフには背中を押します。逆に順風満帆で走っている子には、こちらがアトラクションを用意して、現状に甘えないようにする。具体的には、合宿やイベントなどを活用して、負荷をかけます」
企業の社員はその能力によって「2対6対2」で分けられるとよく言われる。『OCEAN TOKYO』では、この「2対6対2」のどこに位置するスタッフかによって、教育の方法も変える。
「上位の2割はとにかく好きなように走らせます。上が余計な邪魔をしないことが一番大事。真ん中の6割は、困ったり悩んだときに助け舟を出す。そして、最後の2割には何も求めない。毎日サロンに来てニコニコしてくれているだけでいいと思っていますし、教育する側にもそれ以上のことを絶対に求めるなと伝えています」
下位層を切り捨てないのには、理由がある。
「OCEAN劇場というステージで、お客様に経験と生き様を売るサロンであるためには、主演も必要だけれど、脇役だって必要です。下位グループ層の感覚に近いお客様も多い。彼らだからこそ伝えられる生き様もあると僕は考えています」
▲書類だけでなく、全員と会いたいという想いから始まったオーディションには長蛇の列が。サロンを共に盛り立てるスタッフにふさわしい人材を巻き込むための、『OCEAN TOKYO』らしいイベント。この日はスタイリストも全員立ち会う。
若手を動かす21の絶対法則とは?『若手を動かせ』(中村トメ吉著)
カリキュラムがないことはいいことばかりではない。
「カリキュラムがないということは、一人ひとりの志とそれを叶えるための道筋に対して正面から向き合わなきゃいけないということ。正直言って手間はかかるし、面倒です。カリキュラムがあればどれだけ楽だろうと思うときもあります」
しかし、あえて手間がかかる方法を選んでいるのは、この指導法が、若手を導く上の人間の成長速度も加速させると考えているからだ。
「カリキュラムがあれば、それに沿って指導すればいい。言い方は悪いけれど、それは誰だってできる。でも、一人ひとりの志を把握して、その子が自分が目指す山を登れるように導くためには、その子の心を動かす工夫が必要になります。その過程で、教える側も一気に成長できる」
“教える側も共に成長する”ことを重視するのは、『OCEAN TOKYO』がこの先、全国への店舗展開を見据えているからだ。
「5店舗で終了するなら、こんな面倒なことはしません。でも、全国でお客様に経験と生き様を提供できるサロンをつくるためには、今のメンバーが自分で若手を育てられるようにならなくてはいけません」
中村さんは今、『OCEAN TOKYO』の教育法をまとめたビジネス書を出版準備中だ。美容師だけではなく、一般のビジネスマンに向けて、『OCEAN TOKYO』の教育の真髄を紹介する。
「『OCEAN』の教育は、単にカットが上手い美容師を育てるだけの教育ではありません。人と人とが向き合ったときに、魅力ある人間を育てたいと考えています。美容師という『仕事人』ではなく『人』として育てる。どんな業界にも、どんな時代にも通じる人間を育てることができる、本質的な教育をしていきたいと思っています」
【profile】
中村トメ吉(なかむら・とめきち)『OCEAN TOKYO(オーシャントーキョー)』代表。’84年11月2日生まれ。栃木県出身。東京美容専門学校卒業。
(出典:『Men’s PREPPY 2018年2月号』、text: Yumi Sato、photo: Kenji Okazaki)
若手が就職したいと殺到し、若者がカットにおとずれる、社会現象を巻き起こす美容室。『若手を動かせ』では、社会現象ともいえるカリスマ美容室を立ち上げ、業界に“革命”を起こすまでに成長させたその「原則」を完全公開。代表の中村トメ吉氏が初めて全てを明かした本音の仕事術。若手を率いるリーダーから意欲ある若手まですべての人に送る、チーム作りの強化書です。
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「もし、あなたが若手に対して「なんとなく扱いづらい」といった苦手意識を持っているならば、 確実に損をしています。これからの時代に活躍していきたいと思ったら、若手の協力を得ること、若手が生き生きと働いてくれることは必要不可欠になります。しかも、若手の扱いに悩んでいる人がこれほど多いのですから、若手を動かせる人は、組織でも確実に重宝されます。ひと言で言えば、これからは『若手を動かせる人こそ、成功できる人』ともいえます」
(「はじめに」より)
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