ダクトテープ旋風
NALU 2020年1月号 No.115
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2018.04.23
「若手(とくに男性)が何を考えているのかわからず扱いづらい。育てにくい」
「若手のやる気を感じず、冷めていている」
もしそう思っているとしたら、とても勿体ないことです。なぜなら、若手を動かすことこそ、組織・企業の成長につながることだからです。ではどうしたら、若手を動かし、チーム力を高めることができるのか。
美容業界において数々のレコードを塗り替え、大革命を起こした「OCEAN TOKYO(オーシャン トーキョー)」の原動力は平均年齢23.8歳という若手社員の活躍です。その力を引き出しているのが、若きリーダーの中村トメ吉氏。彼には「人を動かす21の鉄則」があると著書『若手を動かせ』で記しています。若手が話しやすい関係を作り、やらせるのではなく、やりたくなる環境を作ることで若手は動く。そのために大切な3つの鉄則を紹介しましょう。
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■登る山は、自分で決めさせる
若手が自発的に動くようにするために一番大切なことは「自らの口で志や目標を言わせる」ことです。これは山登りに例えると、「どの山に登るか」を自分で決めさせるようなものです。会社や先輩の都合ではなく、自分の夢を実現するためだったら、若手は本気になれます。僕はその情熱を大事にして若手を導きます。
■「わくわくする」状況を作り出す
登るべき山が見つかり、それを若手自身の言葉で宣言させたら、次にするのは、その頂上からの景色を具体的に想像させてあげることです。僕は若手の指導者によく、「やらせるより、やりたくさせるようにして」と伝えます。この「やりたくさせる」ための極意は、感情を動かすこと、すなわち「わくわくさせる」ことにほかなりません。
山登りでいうと、この山を頂上まで登ることができれば、どんな景色が見えるのかを想像させるのがそれにあたります。その景色を見てみたい、わくわくすると思えれば、自然と山を登る意欲がわきます。人に「登りなさい」と言われて登るのではなく、自分から「早く登りたい」と思わせるのです。
この山を登り終えたときには、自分のおかげでたくさんの人が幸せになっているだろう。多くの人を幸せにできた証拠として自由になるお金も手に入るだろう。そのお金を使って、さらに経験を積み上げ、もっと多くの人を幸せに笑顔にできるだろう。そんな頂上からの景色をリアルに描かせることができたら、若手はその山を登りたいと思えるようになります。
■先輩たちと同じ景色を見せる
先輩たちが、自分の山を登ってきた結果、どんな景色が見えるようになったのか。それを感じてもらうためには、物理的に「現場」に連れて行き、その景色を見せることもあります。
たとえば、仕事の場では、先輩の講演会で若手にも時間を与え、大勢の前で話をする経験をさせたりしています。ほんの数分であったとしても、そのステージに立つことは、山の頂上から見える光景を、リアリティをもって想像できるきっかけになります。仕事だけではありません。普通であればなかなか出会えない人との会食の場に連れて行ったり、会員制のお店で一流のサービスを体験させたりすることもあります。
これは、もちろん接客業として本物を知ってほしいという狙いもありますが、それ以上に、山を登り続けていると、こういった一流の人たちと交流できたり、対等に話ができたりすることを知ってもらいたいからです。これこそが、「山の上から見える景色」です。若手が「自分もこうなりたい」と感じる強いモチベーションになります。
若手を動かす21の絶対法則とは?『若手を動かせ』(中村トメ吉著)
■自分を知らない人間は加速できない
若手には時代を動かす力がある。将来を真剣に考えていて、体力も集中力もある分、情熱さえ引き出せれば、上の世代より若手のほうが強い戦力になる。僕はそう考えています。
ただ、一点、若手に唯一弱点があるとしたら「自分を知らないこと」です。とくにオーシャンでは、ヘアデザインを売るのではなく自分自身の経験と生き様が商品なので、良い部分も悪い部分も、自分のことをちゃんと知った上でオープンにできなければ、仕事にもなりません。このことを、僕は、若手社員に「自分の取扱説明書を持ちなさい」という言葉で伝えています。
最初は自分を知る時期、次は、知った自分で世の中にアプローチする時期。そしてその次は、知った自分で世の中に新しい価値観を提供する時期。自分を知るからこそ、「選択と集中」が可能になります。自分を知らないことには、スピード感ある成長は期待できません。
美容業に限らず、「若手を動かす」という観点からいっても、若手に自分自身を知ってもらうことは大事です。なぜなら「若手を動かす」ための必須条件は、彼らを情熱のままに行動させることだからです。若手が自分自身を知って自分をさらけ出せないと、これができません。
自分を知るのに一番よい方法は、心のままに行動することです。周りの目を気にせず、ブレーキをかけずに振り切るという表現が近いでしょうか。一度振り切って超えてしまうくらいのほうが、戦略を立てられるのです。
そもそも、人間はプラスの側面とマイナスの側面を差し引きしたら、全員同じ点数になると僕は考えています。だとしたら、いいところも悪いところもちゃんと把握した上で、感情のままに生きたほうが本来の能力を発揮しやすくなります。
■安心して踏み外せる環境を作る
しかし、「人にどう思われるかは気にせず、振り切って自分をさらけ出しなさい」と口で伝えても、若手にはそれができません。若手と話をしていると、彼らは私たち世代以上に、「人に嫌われたくない」という意識を強く持っていることに気づきます。
さらに若い世代はSNSやLINEなどでの文字コミュニケーションに慣れているため、対面でのコミュニケーションを怖いと感じる人が多いのも特徴です。そのため、自分をさらけ出すことに抵抗を感じる人が少なくありません。
嫌われること、自分をさらけ出すことを怖がる若手に対して、上の人間ができることは、安心して「踏み外せる環境」を作ることです。僕は若手に対して、「僕たちが君を知ることができない限り、君を輝かせることはできないから」と伝えます。だから「安心して踏み外していい」と。
そして、振り切って行動したときに、その若手の周りに敵が増えた場合は、代表陣が一番の味方になることを保証します(一方で、若手が味方ばかりに囲まれている場合は、若手が人に好かれることだけを大事にしている可能性があるので、自分が率先して敵になります)。
これは意外と誤解されていると思うのですが、若手が怖がっているのは、自分をさらけ出すこと自体ではなく、さらけ出した結果「あいつは調子にのっている」と陰口を叩かれることです。ですから、「もし君が調子にのっていると思ったら、ちゃんと指摘するから、まずはとことんまでやってみなさい」と伝えます。馴れ合いではなくちゃんと自分を見てくれる環境を作ることで、若手は安心して自分を表現できるようになります。
若手を動かす21の絶対法則とは?『若手を動かせ』(中村トメ吉著)
■時間を使う。圧倒的に
他業種の経営者の方や、プロジェクトリーダーの方に、「どうしてオーシャンの若手はこんなに生き生きと楽しそうに働いているの? その秘訣は何?」と聞かれることがよくあります。一番「なるほど。うちとの違いはそこです」と納得されるのが、「圧倒的に時間を使って接しているから」という回答です。
僕をはじめとして、スタッフたちは、若手との時間を何よりも大事にしています。たわいない話から始まって、腹を割って話せるようになったら、幼少時代の話、昔の彼女の話、家族の話、これまでやった部活やバイト、コンプレックスの話も聞きます。スタッフと話すいろんな話の中で、とくに大事なのは、プライベートなことに関するエピソードです。なぜなら、その人の考え方のくせ、すなわち価値観は、プライベートなエピソードに出てきやすいからです。
話を聞くだけではなく、職場ではない場所での時間の共有も大事にしています。サーフィンやスノボ、サッカーなどを一緒にすると年齢関係なく気持ちが解放されるので、その人の価値観が現れやすくなります。そして、その考え方のくせは、ほとんどの場合で仕事での考え方のくせと同じです。
スポーツだけではありません。面白いもので、彼女の意見を悲観的に捉える若手は、お客様の言葉をやはり悲観的に捉えてしまいがちです。クラブでついいきがってしまう若手は、仕事でも自分を大きく見せてしまうくせがあります。そういうくせがあると知って若手と接すると、仕事でもコミュニケーションをとりやすくなります。プライベートでのものごとの捉え方と、仕事でのものごとの捉え方は、リンクします。こういった、考え方のくせ(=価値観)を知るために、過去の話をしたり、プライベートな時間を共有することが大事なのです。
■新しい「価値観」は若手の武器になる
「価値観」を変えさせるだけで、急に業績が伸びる若手はたくさんいます。まだ人生の経験が浅い若手は、いろんな価値観を知れば知るほど、それをそのまま自分の武器にすることができるのです。
たとえば、一流の接客をするレストランに連れて行ってその店の従業員に話しかけさせたり、人気アーティストのコンサートに連れて行きプロフェッショナルなエンタメを経験させたり。それだけでも、若手の価値観は一気に広がります。「そういう夢を持っているなら、○○店のあの先輩と飲みに行ってごらん」というだけでも全然違います。新しい価値観を手に入れた若手は、わかりやすく次の日から張り切って働き出します。
(出典:『『若手を動かせ』』、編集:プレッピー編集部)
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