ぬりえで楽しむ平安絵巻
ぬりえ 源氏物語
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2015.07.27
零式艦上戦闘機、いわゆる零戦(ゼロ戦)など第二次大戦中の戦闘機の多くに星形エンジンが使われていたことは、ご存じの方が多いと思う。
空冷エンジンで高出力化のために多気筒化しようとすると、直列エンジンでは後ろのシリンダーの冷却がままならない。できるだけ多くのシリンダーをしっかり風に当てようとすると、必然的に星形形状になっていくのである。
しかし、星形エンジンでは大出力化すればするほど前面投映面積が増し、空気抵抗が増すという矛盾もある。それゆえ、大戦後期には米軍のP-51Dマスタング、ドイツ軍のメッサーシュミットBf109、イギリスのスーパマリン・スピットファイアなどV型エンジンを積み、機首をスリムにし飛行速度を上げた機体が増えていく。しかし、V型多気筒エンジンを航空機に積むにはラジエターを持つ液冷化が必須で、日本でも三式戦飛燕が開発されたが、基礎工業力の差というべきかトラブルが多く、故障に悩まされたという。
それはともかく、そんなわけで、現在はあまり使われない星形エンジンだが、それだけになじみがなく、あまり知られていない部分も多い。中でも一番興味深いのは、そのクランクとコンロッドがどうなっているかだろう。
ここでは上の写真にある南洋諸島で回収された栄21型発動機をもとに話をしよう。
ちなみに、栄21型を搭載していたのは零戦の22型。下の21型とほぼ型とほぼ同型の長い主翼を持つ機体だ。が、下の21型は唯一の飛行可能な21型だが、リバースエンジニアリングで新造された機体で、全力飛行が可能な貴重な機体だが、搭載されているエンジンはP&Wの R-1830ツインワスプ。
まさか星形エンジンをバイクや車に積むわけにはいかないので(黎明期には積んだバイクもあったが)、我々がその構造を目にする機会はほとんどない。しかし、実のところ一番ユニークなのは、そのクランクとコンロッドの構造だ。
バイクや車に詳しい人なら、V型エンジンの場合、同ピンにせよ、そうでないにせよ、少なくともそのクランクの厚さ分はシリンダー位置がズレていくことはご理解いただけるだろう。
しかし、外見をよく観察すれば分かるように、星形エンジンのシリンダーは同一面にあるのである。
零戦の場合1列7気筒が、2列。つまり14気筒のエンジンとなっている。7気筒ごとに同じ平面上にあり、後列は冷却のために、その隙間に顔を出す構造となっている。
では、そのクランクと、コンロッドはどうなっているのだろう?
答えはこちら。なんと、ピンはひとつで、ひとつのマスターコンロッドに対して、他の気筒はリンクコンロッドというカタチで接続されているのである。
なんだか、バランスが悪いような気がするが。これでいいらしい。
ちなみに、このコンロッドはタイトルカットと同じエンジンの部品で、再稼働を目指して米国の工場でレストア中のエンジンの部品。コンロッドの形状や表面加工は現代の工業製品と言われてもわからないほどの工作精度で仕上がっており、80年前の工業技術の素晴らしさの一端を感じることができる。
また、興味深いのはこのマスターコンロッドは前列は、正面から見て右方向、下から103°の方向に使われるということ。後列はちょうどその180°反対側に使われている。マスターコンロッドだけを考えると、前列と後列で水平対向のような配置になっており、回転バランス上それが優れているということなのだそうだ。
さらに、バルブ駆動のためのプッシュロッドを押すカムは、星形の場合カムシャフトではなく、カムプレートになっているとか、吸気や排気にも非常にさまざまな工夫が施されていることも見て取れる。
鋳造で作れたシリンダーのフィンは非常に繊細で、溝も深く、当時の鋳造技術の高さが見て取れる。
いくら見ても見飽きない、零戦のエンジン、栄21型発動機の詳細は、以下の本に詳しい。エンジンについて非常に詳しい渡辺信義氏の解説で詳細が記載されている。
(村上タクタ)
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