相続法改正を完全網羅!
大切な身内が亡くなったあとの手続きの本 2019年改訂版
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2016.08.30
入院すると、すぐに必要になるのがお金だ。当面の入院費や介護費などのほか、親がひとり暮らしの場合は、住んでいた家の家賃や光熱費などの支払いもすぐにやってくる。「とりあえず」と、自分で建て替えてしまいがちだが、できれば、自分のお金と親のお金は分けて管理したい。一緒にしてしまうと、のちのちトラブルの原因になることがあるからだ。
本人以外がお金を引き出す場合は、通帳や印鑑に加え委任状も必要となる。親に意識があれば、通帳や印鑑の場所を聞き、委任状を書いてもらう。また、病状の変化によっては、本人と意思の疎通ができなくなることもありえる。そういった事態に備え、定期預金や貸金庫、ネットバンクの口座の有無などについてさりげなく聞いておくといいだろう。なお、意識がない場合は下図にあるような書類が必要になる。
預金者本人の申し出によって、ATMで代理人が出金できる『代理人キャッシュカード』が作れる銀行もあるので、事前の備えとして作っておくのもいいだろう。また、主な取引をする金融機関を決めておき、銀行の担当者をつけてもらえると、いざというときに相談がしやすくなる。
親が自分で家計を管理していた場合、『毎月、どんな支払いがあるか』を把握し、整理しよう。場合によっては、支払いがしやすいように名義を変える、入院中は不要と思われるものはいったん止める、解約するなどを検討、実施する。
認知症や知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分な人たちを保護する制度として『成年後見制度』がある。これは、病気や高齢により判断能力が衰えて、不動産や預貯金などの財産管理や、介護などのサービスに関する契約を結んだりするのが困難な場合に、不十分な判断の能力を補い、本人が損害を受けないように支援する制度だ。法律の定めによる『法定後見制度』と、将来に備えたい人が契約で行う『任意後見制度』がある。
法定後見人は、本人の代わりに本人の預貯金を引き出したり、介護サービスを受けるための契約ができるようになるなど、さまざまな手続きを行えるようになる。多くの場合、申し立てから成年後見の開始まで3~4ヶ月かかる。親に意識がない場合は、成年後見制度などの申し立てを早めにやっておくのも手だ。
生命保険会社は、被保険者側から連絡をしない限り、入院や手術の事実がわからない。生命保険に入っている親が入院や手術した場合は、できるだけ早く生命保険会社に連絡する。ちなみに、給付金の請求権の時効は一般的に3年となっている(3年を過ぎても支払われる場合もあるので、問い合わせを)。給付金は、受け取り人本人が請求することが基本だが、難しい場合は『指定代理請求人』が請求できることもある。
入院給付金などの請求の際は、手元に生命保険の証券を用意し、保険会社に連絡して証券番号や被保険者の氏名などを知らせる。入院日や病名、退院予定日なども伝えられると、手続きがスムースになる。もし、生命保険証券が見つからない場合は再発行してもらえるので、保険会社に相談を。
お金は、親子間でもデリケートな問題だ。特に、親が倒れたといった緊急時はナーバスになりがち。しこりが残ることがないように、できれば元気なうちによく話し合い、対策を講じておきたい。
(編集 M)
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