この旨さ、悪魔的!!
悪魔のおつまみレシピ
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2017.01.16
香川県丸亀市、丸亀港。その埠頭に小さな“倉庫”がある。一見しただけでは気が付かないが、夜になると「SILENCE BAR」というモルトバーへ姿を変える……。扉を開けるとそこは別世界。随所に“倉庫っぽさ”を残した極上の大人空間へ、いざ足を踏み入れてみよう。
映画やドラマ、小説に出てくる登場人物たちは、なぜかみな行きつけのバーを持っていることが多い。そうしたバーは、とても「子ども」が入ることを許されないようなシックな雰囲気をたたえ、神妙な顔つきやひそやかな会話が似合う、まさに「大人の空間」。
香川県丸亀市にある「SILENCE BAR」は、いかにもそんな物語に出てきそうな最高のロケーション。倉庫を改装したその店は、瀬戸内海の島と丸亀を結ぶフェリーが行き交う丸亀港の埠頭に建つ。昼間は前を通ってもモルトバーと気が付く人は少ないほど、さりげなく佇んでいる。夜のとばりが下りる頃、「SILENCE BAR」の電飾がともり、そこは一変、大人のための酒場空間と化す。
ウイスキーにとって禁物である太陽光を遮るために内壁は貼り替えられ、窓はすべて塞がれている。窓がないうえに照明が最低限に抑えられた空間は、薄暗い。高い天井が倉庫の面影を今に伝えている。L字型に横たわるカウンターの奥には、ウイスキーを中心とした1200種以上のボトルに埋め尽くされた壁。映画のワンシーンに出てきそうなその景色はまさに圧巻だ。
マスターである丸岡俊文さんは、17歳で東京へ出て都内のキャバレーや大阪のバーなど、夜の酒場を渡り歩いてきた。そしてオールドウイスキーと出会い、丸亀港の埠頭にある倉庫に店を構えることになった。唐突に港町との縁ができたわけではない。幼き日に祖父母と歩いた神戸のメリケン波止場や、横浜港近くの友人のバーへ通った日々など、丸岡さんには港町に関わる大事な記憶がいくつもあった。
この空間を特別なものとしているのは、「元倉庫」という空間を生かした造作にも秘密がある。倉庫時代の内壁を取り払って赤煉瓦を積み上げた壁は、蒸留所のような雰囲気を醸し出している。また、鉄を使ったランプシェードによってさらにクラシカルな雰囲気がプラスされている。
店内の一角に増築した中2階席は、階段に沿って流線的にデザインした鉄の手すりがインダストリアルな表情を伝える。薄暗い空間の中でにぶく輝くこうした細部にも、さりげなく目を配りたい。
丸岡さんは、「イメージはウイスキーが眠る樽の中。ここに集う人間の魂もまた熟成し、よい飲み手になっていくことを願いながら店をやっています」と話す。店は2017年に30周年を迎える。倉庫からモルトバーへ。今日もまた丸岡さんとともに「SILENCE BAR」は静かに歳を重ねている。
(ヨシザワ)
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¥1,320(税込)
(2016.10.24発売)
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