カフェとインテリアの関係性。
東京カフェインテリア
© 1999-2021 Ei-Publishing Co.,Ltd.
2017.04.26
京都・鞍馬口駅から少し歩いた趣ある通りに面する『SARASA NISHIJIN』。通りがかった人は皆、その立派な唐破風があしらわれた建物に視線が釘付けだ。そう、ここは昭和5年に建てられ、平成11年に惜しまれながら廃業した銭湯『藤の森温泉』。2017年で築92年という、歴史ある建物なのだ。
入口を入ると、目の前に広がるのは当時、脱衣場だった場所。現在も番台の壁が残っている。さらに、その奥に広がるのが風呂場だったスペース。右が女湯、左が男湯だったのだとか。浴槽の上に床を設置しているため、脱衣所だったフロアよりも少し高い造りに。その絶妙な高低差により、独特な奥行き感を演出している。
「当時のものに変に手を加えるのではなく、そのまま再利用する。歴史のある建物は既に『完成』されていますから。やはり、そのままの姿が美しいと思うんです。そういうスタンスでレイアウトも考えているので、家具はあくまでも脇役。『内装の魅力を邪魔しないものを選ぶ』。ちなみにほとんどが手作りかユーズドのものなんですよ」とは、店作りを担当する尾崎友哉さん。
見所はたくさんあるが、なかでも印象的なのは『マジョリカタイル』。現在では使用禁止になっている鉛の釉薬を用いて焼かれたもので、淡路島の職人が一枚一枚手作り。絶妙な色のグラデーションやコントラストは手描きならではの美しさだ。
そんな昔のものを主役に、脇を固める音楽や照明選びにもこだわりが光る。日が暮れると、裸電球のランプが『ポッ』と灯り、目の前を通る人はつい店に吸い込まれていく。そう、その様子はまるで「ひとっ風呂浴びようか」と銭湯に呼び寄せられるように――。
『SARASA NISHIJIN』のメニューはどれもボリューミー。そのうえ、なんだか懐かしいラインナップ。
「最近は観光客の方も増えましたが、京都という街で長くやっていくには、地元のお客様に愛されてこそ。だから、常連さんが毎日通っても飽きない豊富なメニュー、居心地の良い空間作りを心がけています。昔、銭湯に通われていたご年配のお客様もいらっしゃいます」と尾崎さんは言う。
「ナポリタンスパゲティやオムライスなど、喫茶店を彷彿とさせるメニューも人気です。お腹を空かせた男子学生に好評なのは、カレーや丼もの。僕自身、いわゆるカフェにありがちな少量の料理に満足できない質なので、満足感を大切にガツン! としたものを充実させています。もちろん、女性が好きなスイーツも各種用意しています。ケーキ類は全て自家製なんですよ」。
さらに注目したいのが、店が運営する焙煎所で煎られたコーヒー。手間暇かけて焙煎された豆を使い、スタッフが一杯ずつ丁寧に淹れてくれる。驚きなのは味わいのみならず、お客のイメージに合わせて、その都度セレクトするカップ&ソーサー。そんな粋な配慮が、コーヒーをさらに美味しくしてくれるのかもしれない。
(左)『アップルウォールナッツケーキ(540円)』。自家製のケーキを種類豊富に取り揃える。
(右上)とろ~り目玉焼きがのった『ナポリタンスパゲティ(840円)』。
(右下)カップ&ソーサーはお客のイメージに合わせて、その都度セレクト。どんなカップを選んでもらえるか楽しみになる。
【DATA】
●SARASA NISHIJIN(さらさ にしじん)
住所:京都府京都市北区紫野東藤ノ森町11-1 離楽庵WOODINN 1F
電話:075-432-5075
営業時間:12:00~23:00(L.O.22:00)※昼ごはん12:00~15:00、遅ごはん15:00~18:00、夜ごはん18:00~22:00
定休日:毎月最終水曜
交通:地下鉄烏丸線鞍馬口駅から徒歩15分
http://cafe-sarasa.com/shop_nishijin/
(編集 M)
詳しくはこちら!
¥1,320(税込)
(2017.03.31発売)
この記事を読んだ人におすすめの記事
あわせて読みたい
この記事を読んだ人におすすめの本