2018.01.15
西郷隆盛の最期! 不平士族の乱と西南戦争
皆さんは幕末維新がいつ終わったのか? そこに興味はないだろうか。実は明治になってからも約10年もの間、国内では大小様々な内乱が起こっていたのだ。そこには明治政府が進める欧米にならった中央集権の近代国家建設があり、それは武士たちの特権を奪うことにもなったところに起因する。今回は各地で起こった不平士族の反乱と、その中でも最大の反乱である『西南戦争』にスポット当ててみたいと思う。
『岩倉具視・大久保利通』 vs 『西郷隆盛』やがて起こる西南戦争の原因のひとつになる【明治六年の政変】
武力をもって朝鮮に開国を迫ることを主張する西郷隆盛ら征韓派と、欧米諸国を視察し、日本の近代化の遅れを感じた岩倉具視や大久保利通ら国内改革派が対立。征韓派は論争に敗れ、西郷隆盛らは政府の官職を辞任した。これを明治六年の政変と呼ぶ。結果的に政府首脳と軍人・官僚約600人が職を辞した政治闘争劇となった。彼らは故郷に戻って反政府運動の指導者になってゆく。
明治六年の政変をきっかけに、各地に反政府組織が生まれる!
江戸時代には、士農工商の身分が固定され、武士は俸禄を保障されるなどの特権階級になっていた。明治政府は四民平等をスローガンとして武士の特権を廃した。といっても、公家や大名は華族、武士は士族、その他は平民とする戸籍制度によって身分差は続いた。ただし、1873年(明治6)に国民皆兵の徴兵令が発せられたのをはじめ、1876年(明治9)には武士の俸禄の廃止(秩禄処分)、刀をさす象徴的な身なりの禁止(廃刀令)など、武士の特権が次々に廃止された。士族には新政府の中央・地方の役人や警官に採用された者も多かったが、政府に不満をもつ者が多くいた。とりわけ明治六年の政変(1873年)以後、地方で反政府の政治結社が結成され、暴動を起こすようになった。
各地で不平士族の反乱が起こる!
明治六年の政変以後、特に西日本を中心として、不平士族の反乱が頻発する。
1、赤坂喰違の変
1874年(明治7)1月14日、東京の赤坂喰違坂(東京都千代田区紀尾井町)で不平士族らが岩倉具視を暗殺しようとした。岩倉は負傷したが暗殺は失敗に終わる。
2、佐賀の乱
1874年(明治7)2月、佐賀で元参議の江藤新平らが起こした反乱。政府は大久保利通を指揮官として軍を組織し、鎮圧した。
3、萩の変
1876年(明治9)、山口県萩市で前原一誠(元参議)ら山口県の士族が明治政府に対して反乱した。
4、神風連の乱
1876年(明治9)10月24日、旧肥後藩士族の太田黒伴雄らが廃刀令に反対して反乱を起こし、熊本鎮台を攻撃した。
5、秋月の乱
1876年(明治9)10月27日、旧秋月藩(福岡県朝倉市)の士族らが起こした反乱。のちに日露戦争で活躍する乃木希典によって鎮圧された。
6、西南戦争
1877年(明治10)、西郷隆盛を中心にして起こった士族による反乱。現在の熊本県・宮崎県・大分県・鹿児島県が戦いの場となった。
7、紀尾井坂の変
1878年(明治11)5月14日、大久保利通が東京府麹町区麹町紀尾井町清水谷(東京都千代田区紀尾井町清水谷)で不平士族らに暗殺された。
不平士族最後の反乱『西南戦争』
各地で発生した不平士族の反乱の最後が九州南部の各地で戦闘が起こった西南戦争で、反政府軍の長になったのが西郷隆盛だった。西郷隆盛は戊辰戦争の立役者であり、明治政府では参議の職にある重鎮だった。しかし、征韓論を主張して大久保利通らと対立し、明治六年の政変で鹿児島に戻った。明治政府で重要な地位を占めていた官吏や軍人も西郷に従った。西郷は鹿児島城跡に「砲隊学校」「銃隊学校」などを設立。士族を集めて県の予算や有志の拠出金によって「私学校」と総称する学校を鹿児島県内各地に開校した。この学校に集まった士族の過激派が1877年(明治10)1月、政府の武器弾薬庫から武器類を奪い取って挙兵に動いた。西郷は挙兵に反対だったが、反乱軍の長にならざるを得なかった。
2月15日、反乱軍が熊本に向けて進軍。各地の不平士族も合流したが、政府の鎮圧軍に敗れた。
1877年(明治10)3月4日、西南戦争の中でも最大の激戦となる田原坂の戦いが始まる。戦死者は、両軍合わせて3000 〜4000人とも言われている。田原坂では、両軍ともに土を盛り上げ、土嚢(どのう)を積み重ねた陣地を築き、激烈な攻防戦を展開。両軍の陣地では、銃撃戦が繰り広げられ、最終的には白刃(日本刀)を手にした斬り込み隊が敵陣に向けて突撃。接近戦では、薩摩隼人は無敵の強さを誇った。
この西南戦争の鎮圧によって、幕末からの動乱が収まったと言える。このことから、幕末維新という時代が終わったと捉えることができるのだ。
●外川 淳(監修)
1963年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部日本史学専修卒。歴史雑誌の編集者を経て歴史アナリストに。戦国から幕末維新までの軍事史を得意分野とする。歴史ファンとともに古城、古戦場、台場を巡る「歴史探偵倶楽部」を主催。主な著書に『愛蔵版 地図から読み解く戦国合戦』(ワック)、『城下町・門前町・宿場町がわかる本』『早わかり戦国史』(ともに日本実業出版社)、『完全制覇 関ヶ原大合戦』(立風書房)、『歴史現場からわかる河井継之助の真実』(東洋経済新報社)、『名言で読む幕末維新の歴史』(講談社)、『しぶとい戦国武将伝』(河出書房新社)、『信長 戦国城盗り物語』(大和書房)、『新説前田慶次』(新人物往来社)、『戦国時代用語辞典』(学習研究社)、『坂本龍馬 手紙にみる真実の姿』(アスキー新書)などがある。
(出典:『図解 明治維新』、監修:外川 淳、CGイラスト:成瀬 京司、イラスト:あさい らんこ)
(ヤマダタケシ)
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