2018.01.10
これからの不動産を考える【2】 賃貸や団地が魅力的な選択肢のひとつに
長らく信奉されてきた『土地神話』に陰りが見えてきている。持ち家より、賃貸を勧める専門家も多い。人口減少、空き家問題、マンションの老朽化……さまざまな課題を抱える不動産業界。私たちは、どのような家に住み、どのような暮らしを営んでいくのがいくのがいいのだろうか。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わってきた不動産のプロ・中川寛子さんにお話を伺った。
今後、不動産価値は下がる可能性が高い
戦後日本は高度成長とともに、不動産の資産価値は絶対に下がらない、いわゆる『土地神話』が長らく信じられてきた。事実、東京オリンピックや大阪万博博覧会をきっかけに経済は成長し、不動産価格は値上がりしてきたが、しかし、ここにきて、その土地神話は崩壊を迎えている。
今後は人口減の影響もあり、「これからの不動産は、ごくわずかの値上がりする土地、安定している土地、下がる土地、売れなくなる土地に分かれていく」(中川寛子さん以下同)という。値上がりする土地は都内でいえば虎ノ門、大手町、銀座などの都心の中心部に限り、一般人が個人で購入するレベルの不動産の場合、安定どころか価値が下がる可能性の方が高い。
「いずれ資産になるからとか、不動産を買って儲けようなんて考えないほうがいいでしょう。ファイナンシャル・プランナーの中には、現役のときにローンを組んで家を買うのではなく、引退してからキャッシュで買うのを推奨する人もいます」。
若い頃は生活に合わせた賃貸で暮らし、子どもたちが独立しリタイアした後、夫婦で身の丈にあった必要な広さの物件を購入すれば、老後の生活費を抑えることができるという。
「このようなアイデアで不動産を生かすように工夫していきましょう。今までの常識にとらわれず、アイデア次第では時代のニーズに合わせて不動産を生かすことができるでしょう」。
今後は過疎地だけでなく、都心部も含めた全国のいたるところで空き家が目立つようになるともいわれている。早急な議論と対策が必要になるだろう。
高齢化社会で注目度アップ 再開発化される団地
また、今後は一軒家やマンションだけでなく、団地に住むという選択肢もあるという。大きな団地になれば、数千人が住んでおり、商店や郵便局などの施設が集積されているので、もともと利便性が高い。
UR都市機構では、2025年度までに150団地の地域福祉拠点化を目指している。団地を拠点にして、少子高齢化に対応できるように、団地内の敷地を活用して、高齢者のデイサービスの事業所や認可保育園、病院や診療所を誘致している。
他にも、神奈川県の横浜若葉台団地などで、団地に子育て世代を呼び込み、団地を拠点に街を活性化する団地再生プロジェクトなど、各地でさまざまな取り組みが行われている。
これまでは、『いつかは持ち家』が多くの人にとっての夢だった。しかし、社会の変化や、価値観の多様化により、持ち家を持つことが必ずしも合理的な解ではなくなってきている。これからの不動産は、これまでの常識にとらわれず、もっと柔軟な発想で考えていく必要があるのだろう。
●中川寛子
住まいと街の解説者。東京情報堂代表取締役。オールアバウト『住みやすい街選び(首都圏)』ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に、『この街に住んではいけない』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。
(出展:『驚愕! 日本の未来年表』)
(編集 M)
詳しくはこちら!
¥1,080(税込)
(2017.11.28発売)
ISBNコード|978-4-7779-4886-4
- 本を買う
- デジタル版を買う
この記事を読んだ人におすすめの記事
あわせて読みたい