色で選ぶ万年筆インク!
INK 万年筆インクを楽しむ本
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2018.04.02
絵って、『描く人』か『描かない人』か、そのどちらかにはっきり分かれるような気がします。
そして、『描かない人』は、「自分には無理。絵心ないし。デッサンとかやったことないし」と、絵に対して壁を作っていることが少なくないように感じます。自分もそうだったので、とてもよくわかります。
私も、物心ついた頃から絵を描くことが苦手。仕事でラフ画を描く必要があったのですが、それがとにかく苦痛でした。絵が描ける人は、自分とは別の種類の人間だと思っていました。
でも、実は『描く人』になるかどうかのきっかけは、たったの1枚だったりするのです。ただ1枚、「楽しい!」と思えるお絵かきの体験があれば、絵を描くハードルはぐっと低くなります。私の場合は、ペットの犬を描いたことがきっかけでした。
以来、試行錯誤しながら数年。今も苦手意識はあります。遠近法とか言いだしたら、もうめちゃくちゃですが、描くこと自体を楽しめるようにはなりました。
さて、そんな風に、絵の前でウロウロしている人にぜひ試してもらいたいのが、なんと万年筆! 万年筆といっても、字を書くわけではなく、絵を描く道具としての万年筆です。
なぜ、万年筆がいいかというと、
●線に魅力がある
万年筆の線には味わいがあるので、たとえ少々形がゆがんだとしても、それすらも『雰囲気』となるのです。これはお得です! 万年筆のインクは発色が美しいものが多く、それもまた魅力。『色の白いは七難隠す』と言いますが、万年筆の線も、七難とまでは言わなくても、三難ぐらいまでは隠せます。
●安くて手軽である
『万年筆は高い!』という印象があるかもしれませんが、それは昔の話。今は1000円ほどの安い商品でも、ペン先が割れたりすることがなくきれいな線が描けます。手軽な割に、効果的な表現ができるので、コストパフォーマンスがいい画材だと言えるでしょう。一般的な文具店でも扱っているので、近所に画材屋がなくても問題ありません。それに万一、描くことが楽しく思えなくても、万年筆なら筆記用具として使えます!
さて、先日発売になった『万年筆ラクガキ講座』(エイ出版社、写真上)を見ながら描いてみました。こちらは、万年筆画家・サトウヒロシさんが行っている万年筆画ワークショップの内容をまとめたものです。
この本では、万年筆の線の上を水筆でなぞるようにレクチャーされているのが、とても新鮮! これまで見たことがある他の万年筆画の本では、耐水性のインクを使うように書かれていたからです。
にじみを生かすことで、インクそれぞれの持つ個性が遺憾なく発揮され、美しいグラデーションができます。
『万年筆ラクガキ講座』(エイ出版社)より抜粋。使用インクはパイロットのiroshizuku(色彩雫)シリーズ。
水彩色鉛筆のような画材でもこうしたことはできますが、元の線のタッチも残るのが万年筆の面白いところ。線をにじませればシリアスに、にじませずに彩色すればポップな表現もできます。
実際に描いてみたのがこちら。「つまんないなあ」という表情の子犬。アンニュイな感じを出したくて、万年筆の線の上を水筆でなぞってにじませました。
にじませずに、油性色鉛筆で彩色しました。文字を書くのもいい感じです。万年筆なんだから、当然ですね! 使用している万年筆はパイロットの『カクノ』。文具店で1000円ほどで購入できます。
もちろん上手でなくていいと思うのです。だって自分の楽しみのためだから。でも上達したければ描き続けることが大切で、それには好きなものを描くこと、そして仲間を作ること――個人的にはこの2つをオススメしたいと思います。
後者については、今の時代、SNSという便利なツールがあります。本の中で、万年筆画の公式グループなども紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
万年筆が、あなたのお絵かきライフを開く扉となりますように。
長い付き合いのぬいぐるみを描いてみました。ボロボロになっちゃったので、ほころび防止に洋服を着せています。好きなものを描くのが一番楽しい。下手だっていいんです!
(出典:『万年筆ラクガキ講座』、サトウヒロシ著)
(フリーライター:百名 晶子)
詳しくはこちら!
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