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2018.04.16
天下の帰趨をたった1日で決めてしまった関ケ原の戦い。この戦を、司馬遼太郎はそこに至る人間模様の悲劇であり喜劇と、小説『関ケ原』の中で評している。自身の天下へ驀進する徳川家康とその周囲、豊臣政権存続のために死力を尽くす石田三成。そのどちらかに大きく賭ける者、迷い続ける者。それぞれの思惑は全土で交錯し、美濃、近江国境の1点に集約されていく……。今回はそんな関ヶ原合戦の主要な演者たちを紹介しよう。
徳川家康
豊臣秀吉存命中は、その家臣の位置に甘んじていたが、秀吉が死ぬと天下人への道を歩みだす。ただし、高齢であり時間は少ない。
本多正信
若き日は三河一向一揆に加担して、家康と離れることも。帰参後は参謀的位置で家康を支え、関ケ原への策謀でも活躍したとされる。
井伊直政
遠江の有力武家、井伊家の出身。若くして家康に仕える。数々の武功を挙げ、秀吉にも認められた。豊臣系武将の引き抜き工作で活躍する。
今川家の人質や織田信長との同盟、そして豊臣秀吉への従属など宿命的な困難を生き抜いた家康。秀吉死後、最大の大名となり天下人への道を歩みだす。だが、家康は高齢でもあり、とにかく早い決着に持ち込みたかった。
石田三成
根っから官僚的性格で、いい意味で公正、悪い意味で融通が利かない。さらに、それを隠さないので態度が横柄に映り、周囲に嫌われがち。
大谷吉継
三成と同じく官僚的才能に優れる。秀吉はその軍事的才能も買っていたとされ、重用された。顔が変わるほどの重い病に苦しむが、三成は終生、友人であり続けた。
小西行長
堺商人の家の出で、元は宇喜多直家の家臣。後に秀吉の家臣となる。海運担当として活躍するが、朝鮮出兵では加藤清正と対立し、後々まで争う。
関ケ原の戦いで徳川家康に対抗するのは、豊臣政権を支えた官僚集団。豊臣秀吉の戦を支えたのは、武勇ではなく、頭脳だったともいえ、この官僚集団を「吏僚派」という。これが後々「武功派」と呼ばれる軍人タイプの武将たちと争うようになり、関ヶ原の戦いへの色分けが進むのだ。
黒田長政
朝鮮出兵時の軋轢から、反石田三成の姿勢。早々と徳川家康に近づき、諸大名を東軍に勧誘する。
加藤清正
三成、行長との対立から徳川家康に近づくが、秀吉には大恩がある。要は、その2名さえいなくなればいい。
福島正則
清正同様に三成と行長が気に食わないだけ。だが、血気盛んな性格のため、どんどん家康派となってしまう。
石田三成らと対立し、徳川側に走った大名たちも関ケ原の重要な演者といえる。豊臣秀吉の政権は、超地方分権時代ともいえる戦国乱世の後に現出した、ようやくの統一政権であり、中央集権化を進める必要があった。そのような中「武功派」と呼ばれる大名たちは石高は増えるものの中央から遠ざけられ、地方担当となることが多かった。そして、朝鮮出兵の際には直接負担を強いられるため、中央にいる「吏僚派」を恨むようになるのだ。
直江兼続
上杉景勝の家老で、石田三成とは付き合いが長く、同様に曲がったことは嫌いなタイプ。だから、家康も嫌いなのだろう。
真田昌幸
数ある戦国大名の中でもトップクラスの曲者。この大乱においても、一発かまして領土拡大をねらう。
宇喜多秀家
秀吉にかわいがられ、その扱いは諸大名の中でも別格だった。彼の豊臣家に対する愛情は、ただただ純粋だ。
三成と家康のどちらが勝つかは大事だが、その後、どうなるかも大事。家康相手に戦った武将たちには、一筋縄ではいかない思惑があった。曲者揃いの戦国大名たちは戦いの長期化から自分たちがのし上がることを画策し、反対に豊臣家との縁が極めて深かった大名は恩返しのように純粋に家康に対抗しようとする。
吉川広家
家康に従うことで、毛利家存続を図ろうとするが、恵瓊に暴走され、毛利輝元が西軍総大将になってしまう。
安国寺恵瓊
安芸安国寺の僧なので、この通称がある。毛利の外交を担当し、秀吉にも重用された。バリバリの三成派だ。
小早川秀秋
まだ20歳にもならない若者。豊臣家の中心となるはずが、小早川家を継がされ、内心は複雑だった。
関ケ原の戦いに至るまでは、情勢が刻一刻と変化した。このため、最後まで帰趨が決まらず、よくわからないまま終戦してしまった者も多い。120万石という大勢力の毛利家の顛末はもはや喜劇的でさえある。家中が真っ二つに割れ、総帥の毛利輝元を右へ左へと誘い、輝元本人も決められぬまま、事は進んで行く。
このように様々な立場の利害関係や人間模様が複雑に絡み合い、日本を真っ二つに割る関ヶ原合戦へと進んでゆくのだ。そして彼らの多くが1日で戦いが終わると考えておらず、それがまた、たくさんの喜悲劇を生む事になるのだ。
●小和田 泰経(監修)
1972年東京都生まれ。歴史研究家、静岡英和学院大学講師。NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』に資料提供として参加。TV出演も多数。
(出典:『図解 関ヶ原合戦』、監修:小和田 泰経、CGイラスト:成瀬 京司、イラスト:あさい らんこ、カワチ レン)
(ヤマダタケシ)
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