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2018.04.19
先日行なわれたWBC世界フライ級タイトルマッチで、王者の比嘉大吾選手(白井・具志堅ジム)が前日計量をクリアできずに王座をはく奪、翌日の試合で9回TKO負けを喫したことが大きな話題となった。比嘉選手は沖縄県出身の22歳、昨年はデビューから13戦全試合KO勝ちで世界チャンピオンになるなど、ボクシング界期待のニューヒーローだった。
計量オーバーといえば、今年3月に山中慎介選手(帝拳)がタイトル奪還に挑んだWBCバンタム級タイトルマッチで、王者のルイス・ネリ選手(メキシコ)が前日計量で失格した一件が記憶に新しい。もっとも、ネリ選手の場合は、1回目で2.3kg、2回目でも1.3kgとありえないほどの大幅な超過だったため、スポーツマンシップに反すると大きな非難を浴びた。
ところで、ボクシングファンにとっては当たり前かもしれない計量のルールだか、あまり詳しくない人にとっては、なんでこんなに話題になっているのか? しかも比嘉選手の場合はたったの0.9kgでしょ? と思うかもしれない。しかし、ボクシングにとっては、このたった1kgにも満たない体重をめぐって各陣営が作戦を立てている。
そこで、話題になっているから気になったけど、なんとなくモヤッとしている人のために、JBC監修日本ボクシング検定の公式テキスト『ボクシングファンの教科書』からをなるべく分かりやすくご紹介しよう。
現在JBCの規定では、ミニマム級(105ポンド)からヘビー級(200ポンド超)まで、3~25ポンド(約1.36~11.34kg)刻みに細かく17つの階級に分かれている。例えば比嘉選手のフライ級から、5階級までを見てみよう。
フライ級/108~112ポンド(50.80キロ)まで
スーパー・フライ級/112~115ポンド(52.16キロ)まで
バンタム級/115~118ポンド(53.52キロ)まで
スーパー・バンタム級/118~122ポンド(55.34キロ)まで
フェザー級/122~126ポンド(57.15キロ)まで
軽量級はたった約1.36kg増えただけで、階級が1つ上がってしまう。なるべく下の階級で出場するために、ギリギリの体重管理が重要というわけだ。
かつては原則として当日計量が行われていたが、計量後、試合本番までに体力を回復させるのが難しいという健康上の理由から1994年4月1日から前日計量に変更された。この計量でオーバーウエイトしてしまった場合、再計量まで2時間の猶予が与えられ、何度量ってもよいことになっている。
王者が前日計量をクリアできないと、タイトルははく奪され、王座は空位に。王者が勝てば王座は空位のまま、負ければ挑戦者がタイトルホルダーとなる。逆に挑戦者がクリアできなかった場合は、タイトルを懸ける試合にするかどうかは王者が選択できることになっている。
だたし、前提として前日計量でクリアできなかった場合は、試合当日に計量し、規定体重の8%以内であるとこが条件だ。
実はこの8%というのも、ポイントだったりする。JBC管轄の試合では健康管理上、あまりにもきつい減量を規制するために、前日計量から8%以上の体重増加がある選手にはウエイト変更勧告が出される。この8%を逆手に取り、前日計量から当日計量の時間差を利用して計量後に体重を戻して優位に立とうとするのだ。
8%といえば、バンタム級で約4.28kg、フライ級で約4.06kg。例えばネリ選手の場合、前日計量54.8kg(2回目)→当日計量57.5kgで2.7kgの増加。比嘉選手の場合は、前日計量51.7kg→当日計量54.7kgで3.0kgの増加。つまり、1~2階級ほどの差が生じる。ネリ選手の場合は、本来なら一旦53.52kgまで落とさなければならなかったところ、意図的ではないものの(?)減量による体力低下を避け、ファイトマネーだけ勝ち取ったかのような振る舞いが大きな違和感をもたらした。ネリ選手がきちんと計量をクリアしていた場合の差は3.98kgにもなるからだ。
今回は山中選手の試合から1か月足らず、そして世界タイトルにおいて日本人選手では初の事態だったため大きくクローズアップされたが、計量のルールをひも解いてみると、ボクシングがこんなにも綿密な健康管理のもと行われていたことに驚かされたのはないだろうか? 様々な人間ドラマが生み出される計量。これもまたボクシングの魅力のひとつなのだ。
(出典:JBC監修日本ボクシング検定の公式テキスト『ボクシングファンの教科書』)
(K)
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