マニュアル原本完全復刻。
誉発動機 取扱説明書 完全復刻版
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2018.08.21
最初は失敗作かと思われたF4Uコルセアが、その大馬力エンジンと、丈夫な機体を活かして、現代で言うところの攻撃機として活躍し、最終的には朝鮮戦争でまで活躍する傑作機となったことはこちらに書いた( https://www.ei-publishing.co.jp/articles/detail/others-470629/ )。
そのF4Uのシリーズの中でも特異なのがグッドイヤーF2G、通称『スーパーコルセア』だ。
この機体に積まれたのが、F4FワイルドキャットやDC-3輸送機などに積まれたP&W R-1830ツインワスプを2基連結したような形状のR4360ワスプメジャー。
4列28気筒、総排気量7万1500cc。F2Gが搭載した初期型でも離昇出力で3,000馬力、水エタノール噴射時には3,650馬力を発揮していた。さらに最終型R-4360-51VDTでは、スーパーチャージャー+ターボチャージャーで2段過給を行い、実に4300馬力を叩き出すという超怪物エンジンとなっていたのだった。
ヴォート社のF4Uを移管してFG-1Dを生産していたグッドイヤー社が開発したF2Gは、日本軍の特攻機に悩まされた米海軍が大急ぎで開発しようとした低空高速迎撃戦闘機だった。
星形複列14気筒のR-2800ダブルワスプを積んでいたコルセアに、星形4列28気筒のR4360を搭載。わずか半年足らずで試作機が空を飛んだという。
が、その強大なトルクに起因する旋回性能に問題があり、試作増加型がテストを重ねるうちに終戦を迎えてしまった。少し先に量産に移行していた本家であるヴォート社が生産したF4U-4が予想をはるかに上回る高性能を発揮したのも、F2Gが量産に移されなかった一因だという。
このスーパーコルセアは10機が試作されただけだったが、民間に放出されたうちの2機がその大馬力と低空性能を活かして戦後、エアレースで活躍した。
このゼッケン57は、1949年クリーブランド・エアレースで優勝した機体を後にレストアしたものだ。
搭載状態の星形4列28気筒エンジンはさらに複雑。排気管や補機類が這い回り、まるで生き物の内臓のようなグロテスクな雰囲気だ。
複列14気筒の零戦は栄一二型を積んだ二一型で940馬力。栄二一型を積んだ大戦後期の五二型でさえ1130馬力であった。そればかりか生産技術の低下、金属や燃料の質の低下などによってその性能さえ満足に出せなかったことを思うと、こんな複雑怪奇なエンジンを開発、運用出来たアメリカの工業力おそるべしというほかない。
(出典:『F4Uコルセア』)
(村上タクタ)
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