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YOLO.style vol.07
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2019.01.05
高齢者の肺炎と歯磨きには意外な関係があった!?
家族にご高齢の方がいる人には無関心ではいられない話題ですね。日本の口腔ケアの第一人者である米山武義先生に、高齢者の肺炎を予防する方法をお聞きしました。
「長らく日本人の死因の第1位はガンで、それに心疾患、脳血管疾患が続いていました。ところが2011年に、それまで第4位だった肺炎が3位になりました。
驚くことに、肺炎患者の70~80%以上がシニアであり、さらに、シニアの肺炎の中でも、そのほとんどは『誤嚥性肺炎』だといわれています。
嚥下機能は、40代頃から徐々に衰えはじめます。老化とともにのどを動かす筋肉が弱くなることで飲み込むタイミングに微妙なズレが生じ、誤って気管(気道)に飲食物が入ってしまう誤嚥が起きやすくなります。
そのとき、肺に細菌が入り込むことで発症するのが、『誤嚥性肺炎』です。原因は、口の中に多く存在している細菌です。飲み込む力が低下している高齢者の場合、口腔ケアがしっかりなされていないと、誤嚥性肺炎の危険性が高くなるのです。
50代以降は誤嚥性肺炎が急増。
こうした肺炎は、歯科的なアプローチ、すなわち口腔ケアをすることで減らすことができます。私は歯科医として、約40年にわたり訪問診療や介護施設で口腔ケアを行ってきました。
その経験の中で、しっかり口腔ケアを受けている患者さんは肺炎になることが非常に少ないことに気づきました。反対に、噛み合わせが悪かったり、入れ歯にゴミが詰っていたりと、細菌が増殖しやすい不衛生な状態の方が、肺炎になりやすかったのです。
つまり、口腔ケアに対する関心の低さから口腔内環境が悪化し、次第に菌が増殖して、誤嚥から肺炎につながるケースが多いのです。裏を返せば、口腔ケアによって肺炎は予防できるということです。
歯の治療は若いうちにしっかりしておくこと。50〜60代が要です。4ヵ月や6ヵ月ごとに定期検診を受けて、メンテナンスもしましょう。普段から意識的に口腔ケアをしている人は肺炎になりにくいですし、かかっても回復が早いのです」
元東北大学医学部の佐々木英忠先生のご協力、ご指導のもとで、全国11ヵ所の特別養護老人ホームの入所者を対象として2年間におよび大規模な調査を行いました。その結果、上のグラフにあるように、口腔ケアにより、2年間で発熱の割合がほぼ半減しました。また、口腔ケアを行ったグループは、口腔ケアをしていないグループと比べ、肺炎の発症率が約4割減少しました。
「歯磨きは朝イチがオススメです。
細菌は睡眠時に口腔内で大量増殖し、起床時が最大となります。朝食を摂ると一緒に体内に取り込む可能性があるので、朝イチに歯磨きをしましょう。
汚れやすく磨きにくい、歯の裏側から歯ブラシで磨きます。そして、奥歯、詰めもの、かぶせものを重点的にブラッシングします。歯の外側の汚れはすぐに落ちるので後にします。硬い歯ブラシは歯茎を傷つけるので『やわらかめ』を、ヘッドは小回りが利き磨きやすい『小さめ』を使います。
細菌は、歯だけでなく舌の表面にも付着します。起床時に歯磨きだけでなく、舌磨きもすると口腔内がより清潔になります。専用の舌ブラシでも、綿棒でもよいので舌の表面を軽くぬぐいましょう。舌はデリケートなので撫でるように優しく行います。
食前に歯磨きを行うと、口腔内が刺激され、嚥下に関係する神経伝達物質の『サブスタンスP』が増加します。嚥下の反応を高め誤嚥を防ぎやすくなる効果もあるので、ぜひ習慣にしてみてください。
1日1回、夕食後か就寝前には、歯間ブラシも使いましょう。歯ブラシの前に、歯間ブラシで歯と歯の間の汚れをかき出します。年齢とともに歯と歯の間に隙間ができ、目に見えなくても食べ物がつまりやすくなるので要注意です」
●米山武義先生
米山歯科クリニック院長。1954年静岡県生まれ。歯学博士。医学博士。日本老年歯科医学会指導医・専門医。1979年日本歯科大学卒業後、同大学歯周病学教室助手を経て、1981年スウェーデン・イエテボリ大学に留学。スウェーデン政府奨学金給費生。1989年伊豆逓信病院歯科(非常勤)。1991年米山歯科クリニック開業。早くからシニアにおける口腔ケアの重要性に着目し、介護施設で口腔ケアと誤嚥性肺炎の関連を調べる研究を行う。クリニックでの診察のほか、訪問診療や介護施設での口腔ケアの指導にも力を入れており、約40年にわたり在宅医療をサポートしてきた。第66回保健文化賞受賞。著書に『肺炎は「口」で止められた!』(青春新書プレイブックス)などがある。
(出典:『自分で治す脊柱管狭窄症・逆流性食道炎』)
(編集 M)
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