相続法改正を完全網羅!
大切な身内が亡くなったあとの手続きの本 2019年改訂版
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2019.02.07
生前に財産を分け与える「生前贈与」。約40年ぶりに改正された相続法(相続に関する民法)の中でも、2019年7月1日に施行される生前贈与についての見直しは残された人の人生に大きく影響しかねない重要ポイントだ。故人の遺産をめぐる身内のトラブルを避けるためにも、これまで以上に「終活」が大切になりそうだ。まずは今回の改正で何がどう変わるのか、知ることから始めてみよう。
改正前のルールでは、故人から生前贈与を受けた場合、生前贈与分も遺産に加算し、改めて相続人たちで遺産を分けることになっていた。
例えば故人の遺産が1500万円あり、次男が15年前に故人から500万円を受け取っていたケース。ここで遺産相続の対象となるのは、遺産1500万円に次男の生前贈与分500万円を加えた2000万円分。相続人の分配の割合にならって分けると、配偶者である妻は1/2の1000万円を、長男と次男は合わせて1/2の分配となる1/4ずつの500万円を、それぞれ受け取ることになる。しかし次男は生前に500万円を譲り受けていることから、この時に受け取る遺産は0円となる。
これが今回の改正では、遺産に加算されるのは亡くなった日から過去10年間の生前贈与分に限られ、それより前の生前贈与分については遺産の対象から除外されることになった。
前述のケースではどうなるかというと、15年前に次男が譲り受けた500万円は遺産分には含まれない。そのため妻は遺産1500万円の1/2にあたる750万円を、長男と次男は1/4の374万円ずつを受け取ることになり、結果として次男が受け取った額が最も多くなる。
この新しい分配方法のメリットは、昔にさかのぼって紛争が起こるのを防ぐ効果があること。それぞれの遺産相続分は減り、相続人が最低限相続できる財産である遺留分も減少するが、遺産を渡したくない人がいるときには、これを逆手にとって生前に対処することも可能となる。
遺産を相続するにあたり頭の痛いのが相続税だが、その対策としても生前贈与は活用できる。財産の贈与を計画的に行うことで節税が可能になるのだ。
財産を譲り受ける人は毎年110万円以下の非課税枠が使えるため、毎年110万円以下の贈与であれば贈与税がかからない。例えば相続税が10%かかる家庭で330万円の相続をする場合、生前贈与をしていなければ33万円の相続税が発生する。ところが、生前に110万円ずつ3年間にわたって贈与をしていれば、税金をゼロに抑えることができるのだ。
ただし、亡くなった日から過去3年以内に贈与された財産は相続財産として扱われ、相続税の対象になるので注意したい。また、贈与の度に当事者間で贈与契約書を作る必要があることも忘れずに。書式は自由だが、署名と日付は手書き、押印には実印を使用するのがベターだ。
遺産相続については親子や兄弟姉妹の間でもなかなか話しづらいもの。とはいえ、「まだ早い」「分けるほどの財産はないから」などと先送りしていると、いざというときに慌てることにもなりかねない。特に生前贈与については早めの決断がカギ。今回の法改正をきっかけに、財産を譲る側と譲り受ける側がともに考え、話し合う場を設けてみてはいかがだろうか。
(出典:『大切な身内が亡くなったあとの手続きの本 2019年改訂版』)
(エイサイト編集部・ヨシダ)
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