2015.05.28
【実は意外と知らないあの歌の意味】「夏も近づく八十八夜……」の『八十八夜』って?
授業でも習ったあの歌、歌えるけれど、そういえば意味って……?
♪夏も ち~かづく 八十八夜♪ とのフレーズを口ずさむことができる人も多いのではないだろうか。文部省唱歌の「茶摘み歌」は、音楽の教科書でもおなじみの日本の伝統歌のひとつだ。茜色のタスキを身に着けて笠をかぶった女性たちが、よく晴れた初夏の空の下、新緑の中でせっせと茶を摘んでいる……そんな美しい日本の心の風景を頭に描いてみる。
さて、そこまでよく知られている存在でありながら、そこに流れる背景、言い換えれば基礎知識を知る人は多くない。
たとえば“八十八夜”。その数字“88”が意味するところを知っているだろうか? 実はこの数字だけでなく、この歌には日本独自に発展した暦“七十二候”がベースにあるのだ。
八十八夜は日本独自の節目。立春(節分の翌日=2月4日)から88日目、の意味であり、春の陽気に満ち溢れ、植物がすくすくと育ちお茶の新芽が生えそろう5月2日ごろにあたる。畑仕事が本格的に始動する大事な時期だ。
あと3日で立夏というタイミングなのだが、「八十八夜の毒霜」という言葉があるほど、農作物が遅霜に襲われることが多い。なので遅霜にやられないうちにと、農家総出で茶摘みが行われる。
そんな暦の知識や背景を知って今一度歌詞を見返せば、頭で描いていた牧歌的で美しい絵のような茶摘みのイメージに、自然の力にゆだねつつ懸命に仕事に励んでいる人々の現場風景という側面も重なって見えてくる。なんだか、平和な景色でありながら、どこか緊張感もうっすらと漂ってくるような気がしてこないだろうか。
暦を知ると、その当時の人々の暮らしが見えてくる。いまに続く伝統行事や習慣にも、本来の姿や意味が見えてくる。自然に寄り添って生きていたかつての日本人の心を知るようになると、あなたの日々の過ごし方は少しずつ、しかし確実に、豊かになっていくはずだ。
(ヨシザワ)
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