人生が100倍オモシロくなる仏の教え
2016.02.17
木こり系女猟師、原薫さんが笑顔でつなぐ山の命
女猟師と聞くと、どんなイメージを抱くだろう。獲物を追って野山を駆け回り、勇ましく銃を構える。しかし、そんな印象とはちょっと違う女猟師がいた。仲間たちと協力して獲物と捕らえ、猟が終われば笑顔で一緒に鍋を囲み、休みの日にはヨガ教室を開く。そんな女性らしいしなやかさで山と向き合う女猟師を田中康弘氏の著書『女猟師』から紹介しよう。
都会育ちの女性が木こりになったわけ
素材生産に関する山仕事を請け負う柳沢林業で杣人(そまびと)として働く原薫さん。素材生産とは文字通り山の立木を木材にするための最初の作業で、いまや男でも敬遠するほどの森林作業員だ。
原さんが生まれ育ったのは神奈川県川崎市。幼いころに自然の中で育ったとか、親戚に猟をする人がいるわけではなかったが、運命を変える1冊の本との出合いがあった。木挽き職人・林以一氏の哲学を収めた本『木を読む 最後の江戸木挽き職人』。「これを読んで木に携わる仕事、人生を送りたいなあと思いましたね」
「ときどき言われるんですよ、なぜ野生動物を殺すのかって」
そんな原さんには杣人以外の顔がある。それが猟師。仲間たちと一緒に山に入り猪や鹿を追う。原さんが行う巻狩りは、獲物を追いたてる役目の勢子(せこ)、銃を撃つタツマに分かれて協力しながら猟をする。猟が終われば皆で解体、そのまま宴会へと突入。男性ばかりの猟師組に紅一点の原さんは、「薫ちゃんが来ると捕れるんだよなあ。薫ちゃんは女神だ」と皆から歓迎されている。
「猟をやっていると、ときどき言われるんですよ、なぜ野生動物を殺すのかって」。この問は狩猟者が必ず受ける質問である。原さんも狩猟免許を取ったばかりの頃はそう思うこともあった。初めて獲物を仕留めたときのことを「目が合いましたね。しばらく見つめ合っていましたよ。仕留めたときはうれしさ半分。あとは、ああ殺しちゃったなあって」と振り返る。
そんな原さんだか「今でははっきりと言えます。命に差はないと。食肉用で飼育される豚や牛と、山の中を歩き回る猪や鹿。どちらも同じ命なんです。その命を頂くことで私たちは自分の命をつないでいる」。
自分を見つめ直すために始めたヨガは、まわりの人も元気になってほしいと今では教室を開くまでになった。また、山を健やかにするために山に生息する木で炭を作り、それを撒く活動も行っている。そこにある命をいただいて、次の生につなげていく。山を、人を元気にする原さんの活動はまだまだ広がっていきそうだ。
(K)
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