本づくりの原点がここに。
しずけさとユーモアを 下町のちいさな出版社 センジュ出版
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2019.03.06
校内を楽しそうに犬が歩く――。東京都杉並区にある立教女学院小学校では、そんな風景は日常のこと。16年前から犬による動物介在教育に取り組み、現在はエアデール・テリアのベローナが6代目の「学校犬」として教頭の吉田太郎先生と一緒に毎朝登校、授業にも参加している。学校犬ってどんな犬? 子どもたちは犬とどう触れ合い、何を学ぶ? その現場を取材した。
立教女学院小学校の動物介在教育がスタートしたのは2003年。不登校となり、家に引きこもりがちだった児童を吉田先生が愛犬のスコッチ・テリアの散歩に誘い出したところ、コミュニケーションがとりやすくなった。そこから犬との触れ合いを通して学ぶ動物介在教育に思い至り、バディという一頭のエアデール・テリアを迎え入れたのがはじまりだ。
あえてカラダの大きい犬種を選んだのは、子どもたちのオモチャになってはいけないから。さらに抜け毛が少なく、タレ耳で優しい印象を与えるなどの条件をすべて満たしたのがエアデール・テリアだった。猟犬として名高いこの犬種は賢くて服従心が強く、かつ高い自己判断能力も持ち合わせている。それだけに少々気難しい面もあるが、バディは穏やかな性格で、最期まで優れた学校犬であり続けた。
現役のベローナは同じ犬種でもバディとは個性が異なり、吉田先生曰く「全く油断も隙もない」存在。「神経を尖らせて、よく周りを見ている。飼い主が油断している時は叱られないとわかっているから、隙を見ては言いつけを破る」とのことで、事実ベローナは授業中、吉田先生の一瞬の隙を逃さず教室内を探索していた。
一方、大好きなディスクで遊ぶ際には抜群の集中力を発揮し、見事キャッチすると一目散に吉田先生の元へ。そこには両者の強い絆があった。
明るく愛嬌たっぷりのベローナは、もちろん子どもたちにも大人気。出席する授業のはじまりには元気いっぱいの子どもたちに臆することなく教室を回り、一人ひとりと交流。休み時間には6年生のバディ・ウォーカーとの散歩を楽しんでいる。
こうして学校犬の取り組みを続けるためには、例えばベローナなら月に一度のクリッピングケアをするなど、徹底した衛生面への配慮が欠かせない。とはいえ、かつて抜け毛とヨダレの多さで選択肢から外したラブラドール・レトリーバーも、今では学校の一員になっている。盲導犬の育成団体「アイメイト協会」から繁殖奉仕犬として預かったクレアがベローナと一緒に活躍しているのだ。
そうした変化を経ながらも、「カラダが大きい」点は歴代のどの犬も同じ。大きな犬ならではの魅力を、吉田先生は最後にこう語ってくれた。
「ちゃんと向き合う必要があること。カラダが大きいだけに、力でその存在をないがしろにすることはできません。大きい犬と向き合うことで、子ども達は命に対する向き合い方を自然と学んでいるように感じます」
(出典:『BIG DOG LOVERS』)
(エイサイト編集部・ヨシダ)
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