わたしがかけ出しだった頃の話。

BikeJIN編集長 中村淳一

「お前の企画はつまらない!」ボクは入社後、何度、この言葉を聞かされてきたことか。そんなことを言うのは決まって、当時の編集長である。自分では面白い案を出しているつもりなのに、「つまらない」という返事の一点張り(という印象。100回くらい聞いた気がする)。もう、頭が痛くなるほど悩んだ。28歳で編集プロダクションから中途入社したボクは、前職(ガイドブックの編集業)でそれなりに仕事をやってきたつもり。それがこの会社ではまったく通用しない。ボクは編集者という職業の壁に、直面していた。

ボクは高校生の頃から、「将来、雑誌作りをするんだろうな~」と感じていて、大学生の頃に「編集者」という職業を知った。そう考えると、この仕事はまさに子どもの頃からの夢。ボクができないワケないし、そこを信じて頑張ったつもり。でも翌日、企画案を再提出すると、またあの言葉が返ってくるのだ! 「もう、無理。ダメかも」 しかし意外にも、ヤケクソになって案を出すと、意外とOKが出たりする……。だから、「一体、どういう風に企画を立てればいいの?」って、ず~っと悩んでいたし、プレゼンの日はまた言われたらどうしようって、怯えていたくらいだった。

しかし、「つまらない」って30回くらい聞かされてくると、ふと思うことがあった。それは「今までの発想は、ボクのひとりよがりだったのかな」ということ。編集者に求められているのは、読者が知りたいワクワクするような記事を作ること。もしかして、「自分だけが面白い」って感じるような記事を作ろうとしていたのかもしれない。こんなことがあった。誌面のサンプルができあがると、編集長がボソっと言ったのだ。 「お前、頑張ったな」

アレっ、どういう風の吹き回し? 冒頭の発言の方が圧倒的多数だが、こんなセリフが飛び出す日もあった。でも、そりゃそうだ! いつだって「どうだ、ボクの企画は面白いだろう!」って思って記事を作ってますもん。だけど、あのセリフを言われた後は、苦しかった分だけ感激したな~。だから、「頑張ったな」が初登場してから、こっそり回数をカウントしている。読者アンケートも、うれしかったことのひとつ。なにせ担当した企画の評判が分かるから、人気があったときは天にも昇るほどの気持ち良さ。ボクが必死になって集めた情報を全国の読者の皆様に届けられただけでなく、それを面白かったと感じてもらえるなんて、これは何ものにも代えがたい喜びだ。

今思うと、あの言葉は「雑誌作りにおいて、何が大事なことなのか?」を真剣に考えるきっかけとなったボクの財産。ただ記事を作るだけなら、誰でもできる(と、ここでは言わせて!)。だから、編集者は面白い記事を作ってこその職業だと、常に自分に言い聞かせている。あの頃から、はや8年。さすがに当時の編集長から「つまらない」も「頑張ったな」も言われることはなくなったが、今度はこんな“やりとり”が生まれている。 「お前の雑誌はつまらない!」これではボクのかけ出し時代は終わりそうにない。救世主の登場を祈るばかりである……。

profile

中村淳一(ナカムラジュンイチ)。1978年生まれ。2006年、編集プロダクションからエイ出版社に入社し、以来ずっとバイクチームに所属。2014年に「BikeJIN編集長」に就任。編集者になることが憧れだったが、編集長になるとは夢にも思わなかった……

万年筆
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