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【トイズマッコイプロダクト】アメカジ注目ブランド事典

トイズマッコイプロダクトについて

緻密な写実表現「スーパーリアリズム」を追求し、雑誌「ミスターバイク」「ポパイ」の表紙をはじめ三菱自動車、マクドナルド、KFC、ラングラー・ジーンズなど企業広告のイラストを手掛け、コンピュータグラフィックスをいち早く取り入れた作品で1984年日本経済新聞社主宰「ニコグラフ」で最優秀アイデア賞を受賞するなど、イラストレーターとして成功者となった岡本博氏。その一方で少年時代から飽くことない愛情を注ぐのが映画「大脱走」でスティーブ・マックイーンが颯爽と羽織る「A-2」だった。 '78年、1年分のイラストを雑誌社に手渡してアメリカを放浪、探し当てたコレクターから実物のA-2やB-3などを手に入れた。当時、一部の軍マニアだけが知るマイナーな存在だったA-2をポパイなどで紹介し、ファッションとしての位置づけを確立させた氏の影響は大きい。
そしてついに'87年、A-2シンドロームと題して“本物のA-2”を自分の手で作るというライフワークに着手。現在とは違い、手掛かりや経験はゼロ。そのためにスミソニアン博物館を何度も訪れ、彼らの信頼を得た氏は詳細な作成指示が記されたミルスペックや一般人が触れることのない貴重な資料を手に入れた。さらに自ら型紙を引き、当時のノウハウで作り得る最高のA-2を300着限定で作ってしまった。それはポパイの誌面で紹介され、予約で完売という大反響と自作への期待を生み、結果として「ザ・リアルマッコイズ」を設立。服飾の常識を逸脱した細部のこだわりは人々を驚かせた。 その後も「アパレルブランドという意識はない」という氏の言葉どおり、帽体を小型化しつつ安全基準をクリアし、スモールジェットヘルメットというカテゴリーの元祖となった「ブコヘルメット」、微妙な表情の再現だけでなく素材、縫製にもリアリティを 追求したウエアやアクセサリーを身につけた究極のアクションフィギュアなど、エポックメイキングなプロダクツを生み出した。 コストが幾ら掛かるか、という現在のマーケティングを排し、アーティストという視点でクオリティに重きを置いた氏のモノ作りは各方面から一目をおかれる存在。「イッセイミヤケ」の滝沢直己氏やカリスマ的な裏原ブランドとのコラボレーションの実現はその際たるもので、単なる話題づくりのためではなく、こうした岡本氏のもの作りのスタンスにデザイナーたちが共鳴した結果によるものだ。
本物を作りたいという氏の想いの結晶。トイズマッコイのプロダクツは商品というより作品といったほうが自然なのかもしれない。



トイズマッコイプロダクトのアイテム紹介


カンパニーの中核をなす「トイズマッコイ」ブランドはMIL.SPECに裏打ちされた堅牢なパーツを使いつつ、時代や納入業者による違いなどを検証して彼ら独自のスパイスを加えた普遍的なミリタリーウエアや、実在した納入業者の特徴を寸分たがわず再現し、ラベルにもその名を配した復刻フライトジャケットを扱う。またリアルだが壊れやすいガレージキットと頑丈だがリアル感に欠けるトイ・フィギュアに大別されていたフィギュア界に造形、コスチュームとも本物同様に作られた、リアルかつ頑丈なアクションフィギュアもリリース。一躍フィギュアブームを生み出した。スティーブ・マックィーンシリーズやニューヨークトイフェアでグランプリを獲得しルーカスフィルムから祝電を受けるほど評価の高いインディジョーンズなどを輩出している。

1930年初頭にニューヨークで創業した実在のモーターサイクルアクセサリーメーカーが「ベック」だ。数社のOEM供給によるヘッドライトやサドルシート、タイヤなどのラバー製品など、さまざまなアイテムをディストリビュートする、現代では一般的な体制をいち早く採用し、歴史に残る数多くの傑作品を生んできた。いにしえのアビエイタージャケットを踏襲したダブルブレステッドのスタイルから、1950年代に入り一気に現代のそれと変わらないスタイルに生まれ変わったライダー巣ジャケットへの変遷を追体験できるディテールは、常に時代をリードする中核的存在であった同ブランドの懐の深さを今に伝えるプロジェクトだ




1800年代の終わりにアメリカはテキサス州、シャーマンで創業したオールドアメリカン・クロージングというイメージをもとにし、2005年よりスタートしたブランド「マックヒル」。ウエストオーバーオールやワークブーツ、そして堅牢なミリタリーウエアなど、力強い男を象徴するアイテムを幅広いラインナップで展開している。タフであることはもちろん、古きよき時代のクラフツマンシップが香るデザインや素材使い、失われつつあるディテールにこだわった至高のプロダクツは、使い込むほどにインパクトの高い質感を醸し出す。 そんな魅力的なウエアを生み出すのが、このブランドに与えられた使命である

「装甲」を意味するブランド名を冠し、1900年代初頭にウィスコンシン州でワークブーツやベルト、へヴィーなデニム素材を供給したカンパニー、という架空のストーリーに基づいて作られた「アイアンクラッド」。マックヒルブランドのウエアも同社のパーツを使用している、という設定となっており、最高級のアッパーマテリアルをグッドイヤーウェルトで仕上げた本格的なワークブーツなど、タフなアイテムを展開している
西海岸を中心にトライアンフなどの欧州者を取り扱うビッグ ディーラーとして全米に名を轟かせていた「ジョンソン・モータース」。マックィーン所有のトライアンフ・トロフィー・エンデューロ レーサーも同社のレーシングチューンを施されたスペシャルマシンだったことは有名。その誇り高きカンパニーロゴをあしらったウエアは、エンデューロレース全盛期に生まれた数々の伝説やヒーローたちの姿を彷彿させる


安全性は高いが不恰好なフルフェイスや安全性ゼロの装飾ヘルメットが時流の中、ヴィンテージヘルメットのように小さな帽体ながら安全基準をクリアする「ブコヘルメット」を開発。まったくの手さぐり状態から試行錯誤の結果実現したプロダクトは高いファッション性を備え、同じような不満を抱えるバイカーたちに絶大なる支持を得、スモールジェットヘルメットの火付け役となった。また、復刻だけでなくミッキーマウスやフェリックスなどのキャラクターをデザインしたバージョンなどもリリースし、男女を問わず人気を呼んでいる


幼少の頃から氏の憧れである、スティーブ・マックィーンが主演する映画のコスチュームを徹底検証し、再現したブランド「リアル・マックィーン」。代表作である大脱走のA-2にはじまり、カットオフしたスエットやトラウザーズ、ブーツなど、ミリタリーアイテムでありながら、マックィーン独自の解釈でモデファイされたフォルムや絶妙な色合いまでも再現したこれらのプロダクツは、すべて彼の遺族や関係者と交渉し、版権ライセンスを取得することで公式に認められているもの。まさに等身大のマックィーンを体感できるシリーズなのである