わたしがかけ出しだった頃の話。

ei cooking編集長 河崎秀明

「食器のイメージが違うから、今日の料理撮影は中止ね!」「レシピはなくても大丈夫でしょ。あなたが書きなさい」。新卒で入った出版社は婦人実用誌がメインで、配属は料理書の編集部。いきなり、料理研究家のなかでも大御所の担当になり、出た言葉に真っ青になった。「なんなんだ、この理不尽な世界は…… 」 というのが、私の出版社でのスタートだった。

大学3年の頃から出版の仕事がしたいと思い、なかでも20代ターゲットの女性誌か、40代読者を対象にした女性の生き方雑誌の編集に携わりたいと考え、出版社を志望。渋谷にある出版社に入社した。配属先の料理ムック編集部は編集長と先輩ひとりを除いてみんな女性で、取材対象も著者の料理研究家も女性。料理については、学生時代にそば屋さんやケーキ屋さんでアルバイトをしたくらいで、調理のテクニックはもちろん、知識もほぼゼロだった。“みじん切り”って何? “肉の筋切り”って何を切るの? こんなど素人が現場に来るのだから、著者やカメラマンさんもたまったもんじゃない。

しかし、人との出会いは不思議なもの。当時、担当させていただいた著者がみんな60代以上の超ベテランで、料理と縁のない男が必死になっているから助けてあげるといった感じで、多くのことを教えてくれた。表向きは理不尽な仕打ちにしか見えなかったけれど、実は育ててくれていたことに、後になって気づいた。今も、こうした人との出会いを感謝し、大切にしたいと思っている。年齢や性別に関係なく、人から学び、得られるもの、生まれるものは大きい。その後、女性誌や生活全般誌、ビジネス誌、絵本など、さまざまな分野の編集を経験したが、気持ちは常に同じだ。

今、私はエイ出版社で、レシピ本をメインに本作りをしている。かけ出し時代と変わらないことがもう1つある。新人の頃、著者への対応や編集方法で悩んでいた私に当時の社長が声をかけてくれた。「君には今は何もない。でも、君は出版という土俵の上に立っている。立ち位置は隅っこだけど、世の中の一流編集者、人気雑誌とだって勝負できる。君の足は土俵の上にあるんだから」と。出版の世界は常に変化しているが、いまも土俵で戦える喜びをかみしめ、読者をハッピーにする本作りに挑戦したいと思っている。

profile

河崎秀明(カワサキヒデアキ)。出版社編集、編集長を経て、2012年エイ出版社入社。
ei cooking編集部にて料理ムックの『ei cooking』などの編集に携わる。料理は食べるのも作るのも好き。新人時代から1年1kgの着実な体重増加で膝関節症に。今は改善したが、おいしい口コミに負けて今日も街へ。

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